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2016-05-19

どのように学習者に動機付けさせるかは大切なことである。少々教える側のスキルが怪しくても、学習者が十分に動機付けを保てれば、スキルの欠陥を補うことができる。このように動機付けは大切であるので、その分類と分析が試みられている。

統合的動機付けと道具的動機付け

有名な研究として、ガードナーとランバート(Robert Gardner & Wallace Lambert)の Attitudes and Motivation in Second Language Learning (1972)がある。そこでは、フランス語を学ぶカナダ人学習者に対する研究から、学習動機を統合的動機づけ(integrative motivation)と道具的動機づけ(instrumental motivation)に分け、前者による学習の方が習熟度が高かったとした。

ガードナーとランバートは学習者が学習する動因を志向(orientation)として、その志向は道具的(instrumental)なものと、統合的(integrative)の2種に分類できるとした。

道具的志向の学習者は、より良い仕事や待遇を得たい、学校に入学したいという理由(the more utilitarian value of linguistic achievement)により、その言語を学ぶのである。

一方、統合的志向の学習者は、目標言語話者の文化や言葉を理解し、その文化に同化していくことを目的として(as if he desired to become a potential member of the group)その言語を学ぶのである。

また、Gardner らは、統合的志向が強い学習者の方が道具的志向の強い学習者よりも成績が高い、という仮説を立てた。この Gardner らの仮説には反証も多い。道具的な動機のほうが成績がよい場合もある。

動機付けに関する学生の作業

黒板に理由を書いてもらう。

英語科教育法の授業の時に、学生に以下のような作業を課した。学生に、現在の自分が英語を学習している理由は何か箇条書きにさせる。何人かの学生に黒板に出てきてもらい、それらの理由を黒板に書いてもらう。それらの箇条書きされた理由が道具的な志向か統合的な志向に分類してもらう。それらの分類をクラス全員で確認する。あるいは、どちらとも判断できないものもあることを確認させる。

この確認作業で学生の議論が活発化してよかった。普段は意識していなかった動機付けの分類について深く考えるきっかけとなったからだ。

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学生に書いてもらった英語学習の理由

アンケート調査

別の授業では、学生に英語学習の理由についてのアンケート調査を行った。学生に理由を網羅的に挙げてもらう。そして、それらの中から重複する項目は整理してゆく。

結果として、項目は次のようになった。「就職・転職に役立つから」「仕事上役立つから」「資格を得るため」「高い収入に結びつくから」「英語を学習すること自体が楽しいから」「アメリカやイギリスなどの英語圏の文化に共鳴するから」「英米文学に関心がある」「視野を広めたいから」「世界の様々な人と交流したいから」「新しいことを学ぶのが好きだから」「海外旅行のため」「自分の子どもの教育に役立つから」「インターネットを英語で利用するため」「英語のニュース・映画などを理解したいから」「自分の研究分野を極めたいから」などである。

それらを集計して、学生に提示する。学生と一緒にどのような傾向が見られるか検討する。集計結果から、統合的な志向と道具的な志向のどちらが強いかクラスでの議論を通して判断する。

Deci と Ryan の自己決定理論

近年は、Deci (デシ)と Ryan(ライアン) による自己決定理論(Self-determination theory)が注目を浴びている。彼らの研究が外国語学習における動機づけ研究に大きな影響を与えている。Deci と Ryan は、人間には元来、自律性(autonomy)の欲求、有能性(competence)の欲求、関係性(relatedness)の欲求という3つの心理的欲求があると主張する。この3つの心理的欲求を充足する時に,最も自己決定的な行動(人は意欲的になりパーソナリティが統合的に発達する)が起こるとしている。

Deci と Ryan は動機の種類として外発的動機づけと内発的動機づけ(intrinsic motivation)を挙げた。内発的動機づけとは学習する内容への興味などから学習そのものを目的として自発的に学習する動機づけを指し、外発的動機づけ(extrinsic motivation)とは学習そのもの以外から押しつけられた目的のために学習する動機付けを指す。

人が活動に対して内発的に動機づけられるプロセスを上記の図のようにモデル化し,自己決定度の高いものから低いものまでを,「無動機,外発的動機,内発的動機」の連続体として段階的に示した。(資料:原田登美「日本語学習者と英語学習者の留学動機」)

キャプチャ

◎「外的調整」とは、最も他律的な状態で、自己決定の度合いが低く、外部からやらされて行動をしている状態をしめす。
◎「取り入れ的調整」とは、課題の価値は認め,自己の価値観として取り入れつつあるものの、まだ「しなくてはいけないといった義務的な感覚を持っている状態」
◎「同一化調整」とは、行動の持つ価値の重要さが認識され、「重要だから」やるといった積極的な理由へと変わる段階
◎「統合的調整」とは、他の価値観と対立しない自己と融合した価値観を持つようになる段階であり、自らやりたくてそれを行うものである。

内発的動機と外発的動機の特徴

教室内での活動が学習の大半を占める EFL 環境である日本において、英語学習の動機づけが真に内発的なものになる可能性はそう多くない。多くの学習者は、多かれ少なかれ、外発的な動機づけのまま学習を続けているようである。

内発的動機づけは長期的での成功へと結びつきやすく、外発的動機づけは短期間での成功へと結びつく可能性がある。また、一見は対立的に見えるが、内発的動機づけと外発的動機づけは相互に排他するのではない。

言語学習における動機付けは、これまでは「統合的動機付け」と「道具的動機付け」に分類するのが主流であったが、ターゲット言語との接触が少ないFLL(foreign language learning)の環境においては「統合的動機付け」のかわりに、心理言語学者等が提唱した「内発的動機付け」が使われるようになってきている。

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