ライティングとは
ライティングは、文字を媒体として行う産出活動である。一方、スピーキングは音声を媒体とする産出活動である。スピーキングは原初的な人間活動に近いのであるから入りやすい。しかし、ライティングは、文字を学ぶという過程を経なければ始まらないのであり、さらには、語、文、文章とレベルが高度になってゆく。それは学習者の知的レベルの発達にも平行するものであり、それに対応した指導が望まれるのである。
単に機械的なライティング活動だが、近年は好まれない。ある日本語の表現を与えておいて、それを英語にする方法、つまり、昔の英作文方式は現代では提唱されない。だが、現実にはまだ大いに使用されている方法である。まだ理想論の傾向はあるが、ライティング活動はコミュニケーションを意識して行うことが求められている。つまり、学習者は何故ライティングを行うのか、その目的と読んでもらう対象者を意識することが必要になってくる。
例えば、外国に住む友達にメールを送るならば、近況のお伺いであり、対象は友人である。日記ならば、対象は自分であり、目的は内省である。To doリストの作成ならば、やはり対象は自分であり、目的は用事を効率よく済ますことである。
日記のように、自分自身が出来事を記録したり、気持ちや考えを整理したりするためならば、さほど形式にこだわる必要はないが、メールや手紙、レポートならば、他人に読んでもらうのであるから、自分の考えを読み手に分かりやすい伝えるためには、書き方のル一ルに沿って、内容を構成する必要がある。ライティング指導とは、その書き方のルールを学ぶことである。
ライティング指導のレベル
ライティングの指導は、アルファベットのレベル、語のレベル、文のレベル、文章のレベルの4段階に分けて考えることができる。それぞれのレベルにおける、学習法や指導法は異なる。
- アルファベットのレベル:アルファベットを読めて書ける、大文字と小文字が書ける
- 語のレベル:文字と綴り、フォニックス
- 文のレベル: 文の構造、文法に則った英文を作成する、句読点などを学ぶ
- 文章のレベル: 手紙の書き方,パラグラフやエッセイの構成などを学ぶ
アルファベットのレベル
小学校の外国語活動の時間(現在は小学5,6年生、将来は小学4,5年生)で行われている学習である。まず初めにアルファベットを読める必要がある。次の段階として書ける必要がある。小学生の段階では、単語は読めるという点に絞って活動が行われ、書けることまではあまり要求はされていない。
語のレベル
中学1年生から本格的に単語が書けるようになってゆく。単語のスペルを定着させるには、十分な練習が必要である。書き写しのよう な機械的な練習も一定の効果がある。単語の一部を切り取って文字を入れさせる訓練とか、クロスワードパズルを解かせるのも効果がある。
文のレベル
文のレベルでは、文法規則に従って文を書くことを覚える必要がある。五文型に則って文が書けているかどうか。そのときに、適切な語形や語彙を選ぶことが必要である。主語と述語動詞は一致しているか、動詞の活用は正しいかなどが指導の項目となる。さらには、文を構成する修飾的な要素であるが、形容詞や副詞の形などもきちんと覚えることが学習のポイントとなる。
それを定着させるためにも、単語の置き換えや複数の単語を並べ替えて文にする問題がある。置き換えは、文の一部(主語、述語、目的語など)を別の単語に置き換えることである。並べ替えの問題は、ばらばらの順番に並べられた語を正しい順序に並べて文を作る活動である。このような並べ替え問題は、生徒の統語への感覚を育成する上で有効である。これらは中学や高校で行う活動である。
文章のレベル
このレベルでは、各文に一貫性があるかどうか、まとまりのある内容になっているかという点が重要になる。学習者が高校から大学のレベルで行う内容である。しかし、中学の段階においても、コミュニケーション力を付けるという意味から、近年は、このような内容のあるコミュニケーションを目的とした文章を作り上げることが求められる。
その際は、英語文のパラグラフについて指導することが望まれる。英文のパラグラフは、通常1つのトピック(主題)について書かれた文を、それに続く複数の文がさせている。生徒には、まず実際のパラグラフを分析させて、どれがtopic sentence, support sentences, conclusion であるか見極める訓練をさせる。それがある程度軌道に乗った段階で、生徒は実際のライティングへと進むのである。
統一性とディスコースマーカーも指導する必要がある。パラグラフ中のすべての文は一つの話題について書かれていて、統一性があること、ディスコ一ス・マ一カーによって、論理展開が見えやすくなり、読み手はストレスなしに理解ができるかどうか。これらの視点を生徒に意識させることは大切である。