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学生に年度末の試験として、用語を示して、その説明を求める問題を出している。「教科書について説明せよ」という問題を出した。これはあまりに漠然としていて、学生も答えづらいのだろうと思う。これが、「Krashen のモニター仮説について述べよ」のような問題ならば、答えはだいたい決まっていて、解答もほとんど差はない。
教科書だと、あまりに身近なテーマであるので、様々な答えが出るであろう。ここではその中の一つを選んでコメントしたいと思う。
教科書とは、授業の時に用いる教材であり、学習指導要領に示されている教科・科目の目標を達成するために用いられるものである。ここでは、教材は、本文や課題、絵や図などから構成されているものである。機能別、メディア別、機能別、用途別と4種類に分けられる。その時の状況に応じて、目的に合わせて教材を組み合わせて、それぞれの特性を生かして使うことが大切である。
様々な教科書が販売されているが、選ぶ基準として、生徒目線か教師目線であるかに焦点をあてる。
生徒目線としては、(1)難易度は妥当か、(2)文か課題は適切か、(3)生徒のニーズに合っているか、(4)タスクは変化に富んでいるか、(5)動機付けや興味の持続はできるか、などである。
教師目線としては、(1)自分自身の教材観・言語観と合っているか、(2)学習指導要領の内容がどう具現化されているか、(3)教材利用の自由度はあるか、(4)補助教材や資料は充実しているか、などである。
この学生の説明は、教科書を用途別に分類している点が特徴である。淡々と分類しているのである。教師と生徒の状況を見ると、自ずと教科書が客観的に選ばれてくるということになる。検定制度のことや、学習指導要領と教科書の関係などについて、踏み込んだ議論があるかと思ったが、それらについての学生の記述はほとんどない。現代のような多様性の時代ならば、多様な教科書が必要となってくるはずだが、多様な教科書が選ばれる制度的な保証が現行ではないように感じている。このあたりは私だけの杞憂かもしれない。