インプット
言語習得には理解可能なインプッ卜が必要である。それは、Krashenが述べたように、学習者の現在の力(これをi)とすると、これより少し程度の高いインプット(i + 1)に触れることで学習者の理解(comprehensive input)がもっとも進むのである。学習者は、「読む」「聞く」といった受容活動を通して、インプットを得る。学習者は、インプットを理解するとき、対象とする言語の形式、意味、機能の関係を理解することが必要である。
例えば、“Do you have a watch?” というインプットを得て、形式(語彙や文法構造)、意味(語や文の内容)、機能 (何時かを尋ねる)の結びつきを理解できた場合には、それは学習者の言語知識となる。このプロセスはインテイク(内在化)である。言語習得は、学習者が気づいて、理解できたインプットを中間言語 へと内在化されることによって進んでいくプ ロセスである。
しかし、学習者が一回だけのインプットで、その形式・意味・機能の結びつきを完全に理解することは難しい。内容を理解できても、形式までは注意が行かなかったり、形式と意味の結びつきは理解できても、機能面を理解できなくて、適切な場面で適切な表 現を使うことができないことがある。インプットは、中間言語の発達段階に応じて、学習者の興味や関心に応じて、継続的に与えられることが重要である。
アウトプッ卜
学習者による「話す」「書く」のような産出活動はアウトプッ卜である。学習者がアウトプットをすると、インプットでは分からなかったさまざまな気づきが得られる。これは、実際に英文を書いてみたり、英語は話すことで、自分で知らなかった部分を知ることができる。
アウトプットの活動は、自分の中間言語と目標言語とのギャップに対する気づきを促して、学習者の知識や技能の不足している部分を明らかにする。ただ、アウトプットはインプットが十分に入っていることが前提である。あるいは、インプット量に応じてのアウトプットである。教員が生徒にアウトプットを課するときは、生徒のいままでに集積したインプットを考慮しなければならない。
アウトプットをするには、中間言語として内在化された語彙や文法をうまく統合させていく必要がある。例えば、「花子は歌を歌っている」という英文を生み出す場合には、sing, songなどの単語や進行形や冠詞に関する文法的な知識だけでなく、それらの知識を統合して、意味のある文を作らなければならない。
学習者の語や文法に関する意識的な知識を「宣言的知識」declarative knowledgeと言い、それらが実際に正しい文章を産出するため必要な知識に変わったもの「手続き的知識」procedural knowledgeと言う。アウトプットには、学習者の宣言的な知識を手続き的知識に変化させるのである。そして、アウトプット活動を繰り返せば、知識の手続き化が進み、スムーズな言語使用ができるようになる。このプロセスは「言語知識の自動化」(automatization)と言われる。しかし、アウトプットの重要性は白動化を促進することだけではない。アウトプットすることにより、自分が言えること言えないこと(書けることとかけないこと)がより明確になり、中間言語に対する気づきが促されて、学習目標が明確になると言われている。
インタラクション
インタラクションinteraction(相互交流/相互作用)とは、言語の双方向によるやり取りによって意思伝達や情報交換をすることである。インタラクションでは実際にコミュニケーションをすることで、学習者それぞれの言語習得プロセスが大きく促進する。例えば、対話者は相手の述べていることが分からない場合には、意味を確認するために質問などでフィ一ドバックをする。フィードバックされた側は、表現を言い換えたり、誤りを修正するのである。このようなやり取りによって、学習者は自分の中間言語を検証・修正することができて、結果として言語習得は促進される。また、インタラクションを通して、円滑なコミュニケーションを実現するには、言語知識や適切なストラテジー使用だけでなく、表情やジェ スチャーなどの非言語コミュニケーション能力、場面や相手の社会文化背景に関する知識、興味、共感、寛容などの好ましい態度を備えることも重要であることに気づく。
ただ、このような学習者同士のインタラクションでは、中間言語が中間言語に留まってしまう可能性がある。そのためには、インタラクションの相手として、海外の学校とのメールやスカイプ、ALTの活用などが欠かせないものになる。
参考JACET教育問題研究会編『行動志向の英語科教育の基礎と実践』(三修社)