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コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT)はどのように分類されるのか

コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(Communicative Language Teaching)は、数ある教授法の中でどのように分類されるのか。たとえば、名称が似ているもので、コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(Community Language Learning)という教授法がある。これは、Humanistic Approach (人間主義的教授法)の一つであり、考え方は基本的に異なるので、混合しないように注意する必要がある。

CLTとは、linguistic competence よりもcommunicative competence を重視する社会言語学の影響を受けて誕生したのである。しかし、これ以上の明快な定義になると難しい。それは、この考えが、一つの定まった教授法ではなくて、さまざまな特徴や理念を包括したアプローチであると考えられているからである。

ただ、少なくとも「人はどのような時に言語を使うのだろうか」「どういう状況におかれたら言語の必要性は出てくるのか」を考えて、学習者をそのような状況におくことが大切であると考えるのである。学習者に適切なタスクを与えて、学習者が言語を発せざるを得ない状況を与えるのである。そのようにして言語使用を促進するタスク中心教授法が最近注目を浴びている。これに関しては、次の「タスク中心教授法」を参照すること。

コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング

概念・機能シラバス

目標言語を使用してコミュニケ一ション能力の育成を目標とする教授法は、コミュニカィブ・ランゲージ・ティーチング(CLT: Communicative Language Teaching)と呼ばれている。

CLTでは従来の外国語の教材で広く用いられてきた文法や言語構造のシラバスから、言語がコミュニケーションにおける意味や機能を重視した概念・機能シラバスへの転換を図った。概念・機能シラバスでは、依頼、謝罪、同意などの伝達目的を特定して、コミュニケーションが行われる場面や文脈を明確にした上で、それらを目標言語で表現することが学習の目標となる。

たとえば、授業のシラバスは、以下のように配列することができる。
(1)自己紹介をする、(2)相手の趣味を知る、(3)相手を勧誘する、(4)相手に相づちを打つ、(5)相手に謝罪する。などのように分かれていて、ひとつずつこなしてゆくごとに、目標言語の社会での行動様式を学んでゆくのである。

概念・機能シラバスにおいては、カリキュラムは言語使用の場面ごとのユニットに分けられて、言語項目はコンテクスト(文脈)の中で教えるように編成される。

以下のような授業法もCLTである。

タスク中心教授法

タスク中心教授法(TBLT=Task Based Language Teaching)は、学習者に課題や作業を与え、学習者同士が課題達成のためにインタラクションを行うことで、コミュニケ一ション能力の育成をめざす方法である。タスクにはインフォメーション・ギヤップ、ジグゾ一、問題解決型など様々な種類がある。TBLTでは、学習者同士がタスク遂行のために目標言語を使用してインタラクションを行わなくてはならない状況が生み出される。そのために、教員中心ではなくて、学習者中心のコミュニカティブな授業へと転換しやすくなる。

これはゲーム的な要素があるので、比較的年少者に相応しいタスクであると言えよう。

インフォ—メーション・ギヤップ

インフォメーションギャップの例は、ペア活動において生徒Aと生徒Bが互いに欠けた情報を持っていて、互いにやり取りをしながら、情報を補うタスクである。たとえば、twenty questions のように、出題者の頭の中にある「もの・ひと」を他の生徒が20のyes-no questionsで質問することで当てる活動である。

ジグゾータスク

ジグゾータスクは、グループのメンバーがそれぞれ絵や文章の断片を持ち寄り、情報を交換することで、1つのまとまりのある絵や文章を完成させたり、課題を遂行したりするタスクである。インフォーメ一ション・ギヤップと似ているが、ジグゾ一は参加者全員が全体の情報の一部を対等に分け持っている。

問題解決型タスク

問題解決型タスクは、学習者が何らかの問題への解決策を見出すことや、与えられた状況で一定の結論に至ることを目標と するタスクである。「無人島に住むことになりました。あなたは5つのものを持って行くことを許可されました。はたして何を持って行きますか、それはなぜですか」のような質問を皆で話し合うことができる。

内容中心教授法

内容中心教授法(CBLT=Content –Based Language Teaching)は、言語と内容を同時に習得することを目指した教授法である。学習者は、地理や社会などの教科あるいは、環境問題などのテ一マに関して、目標言語で授業を受ける。また、特走の教科内容について、読解、聴解、ディスカッション、発表などを行う。

目標言語の形式よりも、意味や機能に焦点が当たりやすくなる。CBLTは、学習者にとって興味の持てる内容であり、十分なインプットとアウトプットがある場合は効果的である。言語の形式へ注意を向けさせる工夫が十分に行われない場合は、学習者の言語習得は正確性に欠ける可能性が高い。

内容言語統合型学習(CLIL クリル)

内容言語統合型学習(CLIL=Content and Language Integrated Learning) は、言語以外の教科内容を目標言語を使って学習することが基本である。地理や化学などの教科や、時事問題や異文化理解などの学習を目標言語で行うことにより、学習内容 を理解させる。評価の対象は、どの程度内容を理解しているかであり、 言語の習得は評価対象にしない。CLILの重要な指針に「4つのC」がある。これは、Content(教科内容の理解)、Communication(目標言語の使用)、Cognition(認知思考力の育成)、Community/Culture (文化またはコミュニティ一)を指さす。

CLILでは言語の形式や語彙は難易度により段階的に教えられるのではなく、内容に合わせて柔軟に扱われる。また、学習者の認知思考力の発達を考慮して、暗記、理解などの低次な思考力を育成する活動から応用、分析、評価、創造的思考などより高次な思考力を要する活動へと移行する。

CBLTと異なり、使用言語は必ずしも目標言語だけに限定されず、理解を深めるために母語の使用も認められる。さらに、CLILではペアワークやグループ活動が多く取り入れられ、プロジェクト型学習などによる協同学習が基本である。また演劇や絵画など創造性の高いタスクにより評価が行われるなど、目標言語でコミュニケーションを取りながら、学習者の協調性と自律性も育成されることが期待される。

フォーカス・オン・フォーム

CLTが普及し,学習者が目標言語によるコミュニケーション活動を行う機会が増えることは望ましいことである。しかし、意味・機能中心のコミュニケ一ション活動を行うときに、形式にまで十分注意を払うことは難しい。また、口頭でのコミュニケ一ション活動中に、教員が生徒一人一人の誤りに気づいて、それらを正すことは難しい。フォーカス・オン・フォームは、タスク中心教授法やCLILなどにおいて、意識的に言語の形式(語彙や文法)に焦点をあてて、必要に応じて、形式にも注意を向けさせる方法である。

意味中心の活動において、必要に応じて、形式にも注意を向けさせるのである。例えば、リ一ディング教材において目標言語の項目を太字にして生徒の注意を引きつけたり、タスクを行っている問に、いったん中断して。必要な目標言語の形式について、話し合わせたり、活動後の振り返りの中で言語形式の確認を行わせることなどである。

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