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語彙指導をどのようにするかは英語教員が悩むことである。ここでは、まず概念整理をして、語彙指導の在り方について考えてみよう。
語彙とは
語彙とは意味を表す最小単位である。それは、単語(friend)、複合語(boy-friend)、慣用表現=イディオム(make friends with) などに分類することができる。イディオムは連語(collocation)という表現で呼ばれることもある。
チャンク(chunk)とは、固まりという意味であり、一定の文などを固まりとして覚えることである。チャンク学習(chunk learning)とは、その固まりを解体して、適宜入れ替えたりして学習する方法である。
チャンツ(chant)とは、英語独特のリズムを学習するために、リズミカルな言葉の流れを持つ言語材料を示す。チャンクとチャンツは言葉が似ているが、チャンツはあくまでも音声的な視点からの用語である。なお、歌よりもチャンツのほうが子どもたちには、取り組みやすい。
語彙の頻度
頻度数の多い語から教えるのが望ましい。それは易から難へと教えていくと言ってもよい。しかし、頻度数の見極め方だが、児童の見えている世界と大人の見えている世界では、接する語彙の数が異なる。
大人ならば頻繁に接する語、tax, company, duty, boss, promotion などの語はいくら頻繁に用いられるとしても児童にはふさわしくない。児童向けの語彙リストがあれば、それを利用するのも一つの方法である。『Let’s Try』『We Can』の後ろには絵の付いた語彙カードが付いているがこれを利用すると便利である。
それ以外にいろいろな語彙リストがあるので利用するとよい。『ロングマン現代英英辞典』では、2000語ですべての語彙を定義しようとしていることで有名である。また、VOA Special English では1500語だけをもちいている。
受容語彙と発表語彙
語彙には、受容語彙と発表語彙に分けられる。つまり、受容レベル(聴いて分かる)と発話レベル(自分で発話できる)の2つに分かれる。これらはさらに、読めるレベル、書けるレベルなどとも関連する。
さらには、細かく分けることも可能である。1受容的知識 2知識 3概念知識 4音韻知識 5文法知識 6連結語知識 7正字法知識 8語用論的知識 9内包的知識 10メタ言語的知識 (『小学校英語の教育法』アレン玉井光江著、大修館書店 p.206より)
内容語と機能語
内容語とは、意味を持った語を指す。一方の機能語は、それ自体では、ほとんど意味を持たず、主として文法的な機能を行う語である。その数は限られているが、繰り返し使われるのであり、頻度数の統計を取ると、まずは、機能語がその上位を占める。
単語帳などで、語彙の増強をする場合は、内容語が中心になる。一方の機能語は、繰り返し様々なテクストで使用されているため、すでに理解していると思いがちだが、冠詞のa/ the の使い分け、前置詞の使い分けなどは、なかなか慣れない面もある。
意図的学習と偶発的学習
語彙の学習には、それ自体を目的とする「意図的学習」と、語彙学習以外の活動を行った結果として語彙が学習される「偶発的学習」がある。偶発的学習の利点としては、文脈と合わせて学習されることで、忘れなくなることである。それは単語帳を利用した語彙を覚える方法は効率が悪いと言われている。
しかし、EFL環境で英語をがくしゅうするものには、限られたインプットを補うためにも、意図的学習は欠かせない。その意味では、意図的学習と偶発的学習は、相互に補い合うものである。