授業には教員中心の授業(teacher-centered class)と学習者中心の授業(learner-centered class)がある。個々ではそれぞれを解説する。
教員中心の授業
現在の学校教育では授業形態は、教員が中心となって、学習者全体に対して一斉に内容を伝達する一斉授業が主である。教員は黒板、PowerPointを利用して、その間、学習者は黒板やスライドに向かっている。教員の説明を聞く、対面授業による授業形態が主である。
教員の作成したカリキュラムに沿って授業が進行してゆく。学習者に求められるのは主として、知識やスキルの習得である。この形態の利点は、授業内容を効率よく均等に伝達できるという点である。しかし、欠点としては、教員からの一方的な情報の伝達による授業となって、学習者は学習に対して受け身になるという点である。この点では、教員による洗脳であると言い切ってしまう人もいる。
例えば、ホリエモンは「すべての教育は洗脳である」と述べている。その点については、このブログでも述べてある。ホリエモンの抱く懸念を解消するためにも教員中心の授業は細かい配慮が必要となる。
学習者たちの一人一人の理解度や習熟度は異なる。それらの理解度や習熟度に対応するために、一斉授業の中で個別学習を行うことも可能である。机間巡視を行うことで、個々の学習者の理解度を観察したり、個別に質問を受けたりすることで1人1人の学習者により焦点をあてた授業を行うことが可能である。そして、個々に受けた質問は内容によってはクラス全体に対してフィードバックを行うことができる。複数の学習者がつまずいていた箇所について、その内容をクラス全体で共有することができる。
学習者中心の授業
アクティブ・ラーニング
日本の英語教育において、伝統的な教員中心の授業から、近年は学習者中心の授業へと授業形態も変化しつつある。学習者中心の授業の考え方の基本は、学習者が主体となって能動的に学習に参加して、自分で学習を計画してゆく自立型の学習である。学習者が自分で計画して、実行して、評価することで、主体的に関わり、自己の学習に責任を持つことで、それはアクティブ・ラーニングにつながる。もちろん、教員は、学習者にアクティブ・ラーニングをしなさいと単に号令を掛けるだけでは、うまく行かない。あくまでも、教員はその環境作りに関与するべきであり、それによって学習者は積極的にアクティブラーニングに参加できる。そして、学習者中心の授業であるが、教員はその細かい準備をするのであって、最終的な責任は、あくまでも教員にあることは言うまでもない。
ペアワーク
ペアワークとは2人の学習者が主体的に協同して学習を行う授業形態のことである。互いの学びの中で、英語の発話機会を増やして、相手の考えを聞くことで新たな考え方を知ったりすることができる。もちろん、これには学習者がかなりたかいモチベーションを持っていることが必要ではあるが。ペアワークは最終的にはグループワークに進むことが望ましい。
クラス全体で意見を発表するときには、まずペアで考えを共有させると、すぐに英語で発話する自信のない学習者にとっても、準備のための活動となる。それぞれの学習者が授業中に積極的に発言する雰囲気作りに役立てることができる。
発音の練習において、音読する役目の人(話し手)と聴き手を交代で行うことにすれば、聴き手は話し手の読み間違いを指摘したり、その読みを評価することもできる。教員の役目は、どのようにペアを組ませるかを考えることである。ペアワークを好まない学習者への配慮や誰と誰をどのようにペアにするかなど、学習者の興味や性格、能力を常に把握しておく必要がある。
グループワーク
グル一プワークでは、学級を小集団に編成しなおして、ある1つの目標に向かってお互いに協力して学習を進めていくことになる。学習者は、それぞれが課題に対して積極的に関わり、相互に助け合いながら学習するのであり、これは協同学習である。この学習形態は、課題の発見と解決のために他者との協同や相互作用を通して、主体的に、活動することで、対話的な学びを実現するという点で、アクティブ・ラーニングの具体的な形である。授業は最初はペアワークで始まったとしても、最終的には、グループワークへと進んでいくことが望ましい。
なお、グループワークは英語ができる学習者に頼ってしまったり、メンバーによっては、活動に参加するしないの差が生じるので、教員は、グループ内の学習者間で指導者や記録者、発表者などを指名して(あるいは互選で)役割分担をさせるとよい。
なお、積極的に参加する学習者はますます力を伸ばし、消極的にしか参加しない学習者はますます遅れることがある。一斉授業では、その点では、学習者には公平である。
教員中心の授業と学習者中心の授業
これらは互いに対立する授業と考えるよりも互いに補完する考えと考えた方がよいだろう。知識の伝達や習慣の形成的な学習では、一斉授業などが有効である。取得した知識の確認やその限界を知るためには、総合的な思考力や高い動機付けを必要とする学習者中心の授業へと変える必要がある。
要は、二つの授業スタイルを、一コマの中で有効に用いていくことが望ましい。