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ノーム・チョムスキー(Chomsky)は人間が用いる言語を、言語能力 (linguistic competence) と言語運用 (linguistic performance) に分けた。言語能力とは人間に生来的に備わっている言語能力であり、それはどの言語をも習得できる普遍的な能力のことである。言語運用とは、普遍的な言語能力が実際の場面で産出された姿である。
ハイムズは、これらに対して補完的にコミュニケーション能力(communicative competence)を提唱した。それは、文法的能力だけでなく、ある特定の文脈においてメッセージの伝達や解釈、意味の交渉ができる社会的な能力を示すのである。
たとえば、以下のような応答は適切であろうか。
(a) Do you mind telling me the way to the station?
(b) No, I don’t mind telling you the way to the station.
質問者の問いの本質は「駅までの道順を教えてくれ」ということであり、それに対して、(b)のような回答は適切ではない。Chomsky 的には、(a)と(b)の問いかけと答えは文法の運用上からは適切である。しかし、これでは、コミュニケーションが成り立っているとは言えない。社会的な約束、慣習が無視されているからである。
つまり、文法的に適切であることは大事であるが、それに加えて社会的な約束事への配慮が必要なのである。それらの社会的な配慮をも、外国語教育においては学ぶ必要がある。
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