言語の教授法の3つの側面
言語の教授法には、次の3つの側面から論議されることがある。それは、(1)アプローチ、(2)メソッド(教授法・指導法)、(3)技術(テクニック)である。
(1)→(2)→(3)の順番で、理念的から側面から、より具体的な側面へと焦点が移行している。
言語の習得のされ方について異なる理論(アプローチ)があり、それらはさらにより具体的なメソッド(教授法)があり、それに基づいた教室での活動、すなわち技術(テクニック)がある。
アプローチとしては、例えば、オーラルアプローチ、認知学習アプローチ、コミュニカティブアプローチがある。より具体的なメソッド(教授法・指導法)では、オーディオリンガルメッソド、ダイレクトメソッドなどがある。さらには、特定の場で用いられる技術(テクニック)として、ドリル、対話、ロールプレイ、文章完成などがある。
これらの区分けは流動的であり、英語教育法の解説書によっても異なる。さらには、アプローチと謳ってあっても、実質はメソッドであったり、テクニックであったりすることがある。よって、これらの区別はおおざっぱな区分けを示す程度であるとの理解でいいだろう。
アプローチ(approach)
メソッドやテクニックの背後にある言語理論である。言語習得理論や学習理論 などを包括した概念である。体系としての言語を重視する言語観に立脚した構造中心のアプロ一チ(Structure Centered approach)、社会的交流の道具としての言語の役割を重視する機能的な(functional)言語観に基づいたコミユニケ一ション志向のアプローチ(communication oriented approach)、 言語学習を全人的成長を図る過程と捉える人間主義的アブローチ(humanistic approach)などがある。それぞれのアプローチにはさらに具体的な指導法(methods)が存在する。
メソッド(教授法・指導法methods)
メソッド(methods)とは、語学教育では教授法を指す。メソッドは指導方法の総括的な体系である。
- 教授する言語はどのような特徴を持っているか。
- 学習者はどのようにして目標言語を習得するか。
- 指導者は学習者にどのような技能を身につけさせたいのか。
- 用いられるシラバスはどんな種類であるか。
これらの要因によって、いずれのメソッドを採用するかが決定される。メソッドは英語教育のおかれた社会的文脈、英語教育の目的、対象とする学習者の集団の特徴などにくわえて、指導者の英語力や指導力などにより大きく変化する。
例えば、文法・訳読法(Grammar-Translation Method)は、現在は強い批判を浴びている指導法であるが、それは明治期の文明開化期のエリートを対象にした敉授法としては有効であった。
1つのメソッドにのみに沿った授業を行なっている指導者は少ない。ほとんどの指導者は対象とする学習者を見て、さまざまなメソッドのすぐれた点を折衷的に採用している。
技術(テクニック)
指導者がアプローチを定め、メソッドをも確立しても、具体的に教える場合は、テクニックが必要となる。
ロールプレイの手法を活用した授業と考えた場合は、はじめに基本文を覚えさせるのか、基本文を用いてロールプレイさせるのか、学習者の自由度はどれくらいにするかなど、学年、熟達度などにより異なってくる。
参考とした本
リチャーズ他(編)『ロングマン応用言語学辞典』南雲堂
米山朝二著『英語教育指導法事典』研究社