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はじめに

Direct Methodとは、Methodとよばれるが、教授法に関する大まかな信念であり、大枠を提供しているのであるから、Approach と呼ぶのがふさわしい。しかし、ここでは、慣習に従ってMethod という表現を用いる。以下の記事を参照のこと。

また、ダイレクトメソードは以下の記事にも記してあるので参照のこと。

学生と考える英語教育
学生と考える英語教育
https://gakusei.gengo21.com/archives/405
英語教育の意味を問いかける

歴史

学習者の母語を用いないで、目標とする言語のみを用いて教える教授法をDirect Method と呼ぶ。

19世紀の後半になると、外国との交易や人々の交流が飛躍的に増大し、話し言葉としての外国語に対する関心が急速に高まった。その当時は、古典語教育の教授法をそのまま現代語の教授法に応用した文法訳読法が盛んであったが、ようやくその方法の限界が分かり、新しい教授法が求められるようになってきた。

その必要性に対応して誕生したのがDirect Methodである。有名な話として、フランス人グアン (F. Gouin)は、大学で訳読式のドイツ語の授業では優秀な成績だったのに、実際にドイツに留学すると、日常会話さえできず苦労を重ね、落胆して帰国した。ところがその間に3歳の甥がフランス語を修得しているのに驚いて、直接に言語を覚える新しい教授法を思いつくのである。グアンの提言は、その後スウィートやイエスペルセン等によって改善点が加わり、1つの新しいapproachとして確立されていった。

パーマーによる提唱

提唱者の一人、パーマー(H. Palmer)はDirect Methodの特徴を次のように述べている。

  • ①翻訳や母語の使用を排除する。
  • ②文法は帰納的に学習させる。
  • ③口頭で与えたのちにreadingやwritingを行う。
  • ④ばらばらな文ではなく、内容的にまとまりのあるテキストを使用する。
  • ⑤発音指導は発音記号を用い組織的に行う。
  • ⑥文脈や具体物を用いて、語や構文の意味を教える。
  • ⑦教師と生徒間の応答を通して言語事項の定着を計る。

つまり、学習者に外国語を直接体験させるため、応答を通じて導入や練習をし、母語修得の過程に準じた、できるだけ自然な形での言語学習に近づけようとした。なお、パーマーの提唱した方法は、オーラルメソードとしての有名である。以下の記事を参照のこと。

教授法の問題点

Direct Methodのなかでも特に「自然」であることを重視して、母語の使用を一切禁じた方法をNatural Methodと呼ぶ。

この方法は、言語材料への接触が十分でないと、school pidginが生じ正確な発話ができなくなったり、知的な学習を好む学習者は、学習中の事項が明確でないので不満を感じやすくなったり、また常に話される意味を推測しなければならないため、落伍者がでやすくなったり、などの問題点がある。

パーマーやスウィート等のように、母語の使用を一部は認め、上記のような問題点に留意した教授法が望ましいとされる。彼の方法論はOral Methodと呼ばれるが、そこで提唱されているコミュニケーションを通じての学習という考え方は、注目に値するだろう。

このapproachでもう1つ有名な教授法にGraded Direct Method (GDM)がある。GDMの特徴は、教材の配例が厳密に決定されていること、Basic Englishを使用すること、学習者の自発的な活動を重視し、新出事項は発見学習の手法で指導されることである。母語を使用せず授業を展開するには、既習事項から新出事項の導入が可能なように教材配列をきちんと定め、語彙数を制限し、かつ学習者の認知力を最大限に利用する必要がある。

今後の展望

幼児の母語の修得過程への関心は、チョムスキーの言語能力生得説によって再燃し、心理言語学の研究が進むにつれて、その成果を言語学習に取り入れようとする試みがなされている。特に実際の自然な言語交渉で活用できる言語能力は、意識的に暗記した事項ではなく、自然のうちに身についた能力であるとするクラッシェン(Krashen)の仮説は注目に値する。

The Natural Approach

テレル(T. D. Terrel)は、コミュニケーション能力育成には、 過程自体がcommunicativeな教授法が重要だと強調し、次の3原則を立てている。

  • ①教室では意図的な学習(learning)はせず、もっぱら自然な言語習得 (acquisition)が生ずる活動を中心に行う。
  • ②教師は学習者が犯す誤りを、決して直接的に訂正してはならない。
  • ③学習者の応答は目標言語でも母語でも、両方がミックスしたもので も許容される。

具体的には、まず学習者の推理する能力を最大限活用しながら、Total Physical Responseの手法や、学習者の名前や個人的な特徴等を用い て、少なくとも500語の聴解力をつけさせて、次にYes/No answer、 single word answerと次第に長い応答が可能なように指導して、最後にゲームや問題解決型の活動などを与えて、言語を創造的に使用する力を伸ばすとしている。

注目に値することは、初期の段階では特に、文法ではなく語彙力を伸ばすことを中心にとらえ、母語修得のモデルにそって「応答の中から言語ル—ル を自然のうちに獲得させようとする」ことである。

(参考文献)
米山・佐野『新しい英語科教育法』大修館書店

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