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理想の英語学習者とは何か、というタイトルで4名の学生に発表をしてもらった。それらの発表を紹介する。
初めは、Wさんによる「理想的な学習者になるために」という発表である。単に試験のために学習するのではなくて、学習自体に内的価値観をもって、常に目標を持って学習に取り組む学習者が理想的な学習者である。Wさんの英語への関心の原点はシンガポールとマレーシアを旅行した時に、異文化理解への関心を持つようになったことにはじまる。つまり「異文化を理解する」という目標が内的な価値になる。
そのために、自分の学習のパターンが視覚型か聴覚型か運動型のどれかに向いているかをしっかりと認識することだ。もちろん、一つの型に固執するのではなくて、3つのパターンをバランスをとることが大切だ。それは究極的には、目的言語を使用したコミュニケーション能力の育成を目標とする教授法につながるとWさんは述べていた。

次は、Sさんによる発表だ。Sさんは、自律という要素が学習には必要だと力説していた。まず、「自律とは→自分で目標を立て、それを達成するために教材を選び、学習計画を立て、途中で進み具合を確認し、達成しようと継続的な努力ができる能力」であると定義した。そして、継続的な努力をするために、無理のない学習計画を立てることが必要だとのべた。さらに、目標達成への意思を強くすること、長期にわたり自分を律して学習を継続していく意思の強さが必要とも述べていた。
ここで、自立と自律の違いだが、自立とは「自分で行う」ことであり、自律とは「長期的な目標の下で、継続的な努力をする」ことである。この両者の区別はあまり意識されないが、Sさんによれば、しっかりと違いを意識しておくことが大切なようだ。

次は、Aさんによる発表だ。理想的な学習者とは、自立している学習者であって、「自ら課題を見つけ、努力と望む結果の間に関連性があることを理解できる」人であると定義していた。
Aさんは、「自律」と「自立」との概念の相違には、あまりこだわらないで、一般によく知られた「自立」という表現で「自律」をも含んでいた。教育学での用語があまりに専門的で煩雑になることを避けるためだと思われる。これは、Aさんの英語教育に関する考え方であり、それはそれで尊重したいと思う。
学習とは試行錯誤であり、料理のメタファーを用いて説明をした。ご飯を作る時、どうしたら美味しくなるのかを何回も作っていく中で試行錯誤していくように、英語学習も試行錯誤から次第に洗練されてゆくのだ、とAさんはまとめた。

最後は、Nさんによる発表だ。理想的な学習者をNさんが高校生の時に知ったノルウエーからの留学生と関連付けて説明をしていた。その留学生は、母語はノルウェー語であり、18歳にして3つ目の言語習得(母語、英語、日本語)を目指していた。そして、9ヶ月で日本語力が急成長したそうだ。その留学生は、将来は外交官を目指していた。
このように外交官になってグローバル社会の懸け橋になるという目的があると、自律した学習者となりやすい。自分の将来に関してロールモデルを見つけることは大切なことである。
