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リスニングは音声言語を聞き取ることである。しかし、これは単に外部からの音声を受け取るだけの受動的な活動でない。音声を聴いているときは、聞き手は自分の持っている知識を総動員して、話し手の意図を理解しようとするのである。自分の持っている知識をスキーマ(背景知識)と呼ぶ。いわば、スキーマを活用することで、単なる受容的な活動ではなくて、能動的な活動にもなるのである。
なお、スキーマ(schema)の定義であるが、『ロングマン応用言語学用語辞典』(J.リチャーズ他 1998, 南雲堂 )では、次のように説明をしてある(p.327)。
テクストや談話の構成を説明する基底構造、話題、命題、その他の情報がどのように結びついてある単位を形成するかによって、異なった種類のテクストや談話(たとえば、物語、記述文、手紙、報告書、詩)が区別される。この基底構造が「図式」あるいは「大構造」と呼ばれる。例えば、多くの物語の基底をなす図式は以下のようである。
物語=背景(=状態+状態+状態+・・・・)+逸話(=出来事+反応)
つまり物語は、時・場所・登場人物が規定される背景(スキーマ)からなり、その後で逸話が入り、ある反応を引き起こす。
このような説明である。リスニングの時に、聞き手は背景を知っていれば、挿入された逸話の部分に集中すればいいことになる。逸話の部分は要は新情報であり、その部分を理解することでリスニングが最も効率的で、能動的に理解されたことになる。
英語のリスニングの場合は、スキーマを二つに分けて考える。社会的・文化的側面に関する内容スキーマと、文法・修辞法やテキストの構成に関する形式スキーマの二つに分けられる。リスニングを理解する上で、必要なスキーマがないと意味を取り間違えることがある。