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英語教育界では、学習者中心の授業へ、とよく言われている。たしかに昔は学習者中心の授業という概念はなかった。教師が壇上から教える、という考えだけだった。でも今では、できるだけ、学習者に発言の機会を与え、学習者同士で討論して、そしてその結果を全体に発表する、というスタイルの授業が好まれるようになってきた。そこでは、ペアワークとグループワークが基本である。教員の役割は、ペアワークとグループワークがうまく機能するようにお膳立てをすることである。教員はファッシリエーターとして教室内の活動を活性化する役割がある。
そんな中で、「学習者中心の授業とは何か」という設問に対する学生3名の答案を紹介したい。それぞれ、及第点であるが、以下の2点についても言及してほしかった。
(1)学習者中心の授業がかかえる問題点はどのようなものか。
(2)学習者中心の授業では、教師は果たして何をするのか。
特に、(2)の問題点だが、あまり教師が干渉しすぎてもいけないし、放置しすぎてもいけない。さらに、指導やガイダンスの適切な度合いはどこにあるのか、また低学年、英語の不得意な児童生徒の場合はどうするのか。そのあたりについても述べて欲しかった。
さて、以下3つの答案を紹介する。
(Ⅰ)
学習者中心授業とは、教師が教壇に立って、一斉に学習内容を伝達するような教師中心の授業とは反対の概念である。学習者中心授業では、学習者自身が主体となって能動的に学習に参加する自立型の学習のことである。学習者は、自分で計画、実行、評価、管理、調整などを行い、自己の学習に責任をもつことを意識することで、アクティブ・ラーニングへとつながる。学習者中心の授業を展開させるためには、教師は意図的にペアワーク、グループワークなどの異なる授業形態を設定する工夫が必要になる。その際は、個人差や学習者のニーズ、学習スタイルを十分に把握し、個別最適化した授業に近づけるための配慮が欠かせない。
ペアワークでは、2人の学習者で活動していく相互作用の中で、会話をしたり相手の意見を取り入れたりするなどのさまざまな活動を通して、英語力の向上が期待される。また、その中で、自分の意見や考えを他人のものと比較することもできるため、全体で共有するまえにペアで確認し合えることが学習者の自信へとつながり、活発的な授業作りに役立てることができる。ペアで音読練習するときには、読むだけでなく、聞き役にもしっかりと役割を与えることで活動への意欲をさらに大きくすることができる。また、教師は、学級内の人間関係に十分配慮した上でペアづくりをしなくてはならない。
グループワークでは、小集団の中で、ある一つの目標に向かって互いに協力し合う活動の中で、一人一人が主体的・対話的に学びに向かうという学習形態である。グループでやることで、コミュニケーション能力は育成され楽しい雰囲気を作りやすいが、誰か一人への負担が大きくなったり、または学習を放棄してしまう児童生徒がでてしまったりすることがある。教師は各生徒や児童にしっかりと役割を与えたりルールの工夫をしたりする必要がある。
(Ⅱ)
学習者中心の授業の考え方の基本は、学習者が主体となって能動的に学習に参加して、自分で学習を計画してゆく自立型の学習である。平成29年度の学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」から「生きる力」を育てることを目標にしており、児童生徒が授業から自分の考えを創造し、表現することができるように教師は支援していかなければならないのである。英語では、学習者中心の活動として、「ペアワーク」と「グループワーク」を活用することができるといえる。
ペアワークは、互いの学びの中で、英語の発話機会を増やして、相手の考えを聞くことで新たな考え方を知ることができる方法である。クラス全体で意見を発表するときに、まずペアで考えを共有させると、すぐに英語で発話する自信のない児童生徒にとっても、準備のための活動となる。また、発音の練習において、音読する役目の人(話し手)と聴き手を交代で行うことにすれば、聴き手は話し手の読み間違いを指摘したり、その読みを評価することもできるという利点がある。
グループワークは、学級を小集団に編成しなおして、ある1つの目標に向かってお互いに協力して学習を進めていく方法である。学習者は、それぞれが課題に対して積極的に関わり、相互に助け合いながら学習し、課題の発見と解決のために他者と主体的に活動することで、対話的な学びを実現できるという利点がある。
教師は、これらの活動などを活用し学習者中心の授業を作り上げなければならないという使命を持っていると考える。
(Ⅲ)
英語教育において少しずつ革命が行われてきた現代、生徒に向かって一方的に話しながら授業を進めるスタイルではなく、先生は「授業をデザイン」し「学びの補助者(サポーター)」として存在しなくてはならないと言われるようになった。しかし、実際の授業の様子では、一見子ども中心のクラスで子どもたちは楽しそうに活動に参加しているように見えるが、実は彼らはほとんど「学び」を参加しておらず、知的にはとても退屈しているような風景が見られる。
そのような状況にならないためにも、子どもたちにとってすでにわかっていることを与えるのではなく、子どもたちにとっては少し難しいと思えるレベルのものを与え、解決できるように先生または仲間がお互いに導いていくことで初めて「学び」ができたということにつなげていくことが学習者中心の学習であると考える。
