2016-03-07 (更新 2017-05-29)
コミュニケーション能力の素地の育成
小学校の学習指導要領の外国語活動の目標の部分に、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り」そして「コミュニケーション能力の素地を養う」と謳ってある。これはどのように考えたらいいのか、かなり頭を悩ましてしまうさらに、現行の中学校の学習指導要領の目標では、「コミュニケーション能力の基礎を養う」とあり、素地と基礎の違いは何かまで考え込んでしまう。
「とにかく、文法や語彙の習得といった「スキルを身につける」ことを目標にしているのではない。つまり、「コミュニケーションを取ろうとする態度を養う」ということだろうと思われる。
CEFRとの違い
CEFRでも目標を述べてある。しかし、一番初期のA1レベルでも、「やり取りをする」とあって、「やり取りをする態度を取ろうとする態度を養う」に該当する部分はない。これは、ヨーロッパでは「積極的にコミュニケーションを取ろうとする」のは当たり前だからである。小学校の学習指導要領にそのようなことをわざわざ掲げるのは、この日本社会だけに該当する目標であろう。
文部科学省の必死な叫びが聞こえるようだ。シャイな日本人を対象にするのであるから、わざわざ「コミュニケーションを取ろうとする態度を育成する」と言い、それを「コミュニケーション能力の素地を育成すること」と言い直しているのである。中学校の学習指導要領も似たようなものである。
この態度の育成は小学生だけでなくて、中学や高校でも必要な態度である。あるいは大人でも必要かもしれない。しかし、それは日本人のメンタリティが徹底的に変わることであり、もはや日本人ではなくなることにつながるかもしれない。
体験を通して、音声を中心にした練習
さて、素地を育成する、つまりコミュニケーションを取ろうとする態度を育成するには、音声を中心に練習するのである。つまり、面と向かって堂々と英語で話すという度胸を付けるのである。これは英語を書いたり、聞いたりするのではなくて、話すこと、つまり音声面での訓練によって、身についていく。自分の発音に自信がつけば、堂々と英語を話すだけの度胸も付くのである。そして、自分の英語で実際にコミュニケーションをする体験を積み重ねていけば、日本人英語でも大丈夫であるという自信がつくようになる。
なお、体験的に慣れ親しむのであるから、パターンプラクティスやダイアローグの暗唱というスキル向上のための活動は、ここではふさわしくない。
コミュニケーションに慣れることも大切である。それは場数を踏むことである。小学生の段階で外国に留学などは無理であろうから、地域の外国人などに教室の場に来てもらい、実際に話したり聞いたりする経験を積んでもらうことである。交流体験を通じてそのような態度が育成されるのである。