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2016-03-09

小学校と中学校への英語教育において、学習指導要領には、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り」という文面が見られる。これは次のように解釈することができるだろう。外国人(異文化の人)に対しても物おじせずに、堂々と話しかけていく態度を育成することである。そのためには、スキルを磨いて英語力をつけば、外国人に対して、積極的に話しかけられるようになる。しかし、スキルを磨けば自動的に積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成へとつながるのか。

小学校から中学校への時期は日本人形成への文化的な圧力がかかる時期である。クラブ活動では、「先輩の言うことには口答えせずに従う」と言う態度が叩き込まれる。小学校の時には、わいわい話し合っていた児童たちが次第に言葉の重さを知るようになり、言葉が簡単に出てこなくなる。それは、日本社会特有の高コンテキスト社会への繰り入れが進む時期である。

女の子ならば、「知らないおじさんから話しかけられても口をきいてはいけません」と教えられるのである。警戒して、積極的にコミュニケーションを図らないようにしようとする態度も、日本社会では育成される。

会社へ入ったらならば、上司の言うことに「はい、はい」と頷いて、こちらが質問したり、改善提案を述べたりすると「理屈っぽい奴だ」と嫌われる。積極的にコミュニケーションを図る態度の育成と言っても、「素直に聞くこと」と「場の雰囲気を読むこと」ばかりが訓練されるのだ。

日本人が言語能力を上げるには、日本社会が高コンテクスト社会から低コンテクスト社会に移行しなければならない。しかしそれは簡単ではない。日本人が日本文化の呪縛から逃れられないならば、少なくとも英語を話すときには、頭脳の切り替えが必要だろう。英語で話すときは、どんどん話すのだ。低コンテクスト社会用に切り替えるのだ。

つまり、二つの自分を作り上げるのだ。日本語を話すときの物静かな、そして場の雰囲気を読むのにたけた自分、英語を話すときは言葉で相手を説得できるのだと確認して言葉の力に全面的な信頼をおく自分、この二つを上手に切り替えることができる人間を養成することが英語教育の目的である。

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