2016-05-09
中学校の学習指導要領の英語は「第2章各教科、第9節外国語」に記載されている。その目標だが、以下のようである。
第1 目標
外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。
注意しなければならないのは、小学校の学習指導要領では、「コミュニケーション能力の素質を養う」となっているのに、ここでは「基礎を養う」となっているてんである。「素地を養う」、と「基礎を養う」ではどのように異なるか、違いを述べることは難しそうだ。
「英語で読むこと(書くこと)に慣れ親しみ」とある。このように読み書きは「慣れ親しみ」を基本とするのである。「スキルの習得など」と大上段に構えずに、慣れればそれでいいのです、というかなり穏やかな表現になっている。
言語活動の内容であるが、以下のようになっている。
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(ウ) 言語活動を行うに当たり,主として次に示すような言語の使用場面や言語の働きを取り上げるようにすること。
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〔言語の使用場面の例〕
- a 特有の表現がよく使われる場面
- ・ あいさつ
- ・ 自己紹介
- ・ 電話での応答
- ・ 買物
- ・ 道案内
- ・ 旅行
- ・ 食事 など
- b 生徒の身近な暮らしにかかわる場面
- ・ 家庭での生活
- ・ 学校での学習や活動
- ・ 地域の行事 など
- a 特有の表現がよく使われる場面
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〔言語の働きの例〕
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a コミュニケーションを円滑にする
- ・ 呼び掛ける
- ・ 相づちをうつ
- ・ 聞き直す
- ・ 繰り返す など
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b 気持ちを伝える
- ・ 礼を言う
- ・ 苦情を言う
- ・ 褒める
- ・ 謝る など
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c 情報を伝える
- ・ 説明する
- ・ 報告する
- ・ 発表す
・ 描写する など
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d 考えや意図を伝える
- ・ 申し出る
- ・ 約束する
- ・ 意見を言う
- ・ 賛成する
- ・ 反対する
- ・ 承諾する
- ・ 断る など
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e 相手の行動を促す
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・ 質問する
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・ 依頼する
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・ 招待する など
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これらは、いわゆるCommunicative Learning Teaching (Notional-Functional Approach) の考えに基づいている。つまり、学習者がさまざまな場面状況においても外国語(目標言語)を用いることができるかがポイントである。Audio-Lingual Method とは異なり、その目標は、完璧な文法構造の習得や母語話者の発音の模倣ではなくて、学習者自身が意味を生成していくことを支援することにある。
教員側が通知表に評価する時は、発音や文法の正確さではなくて、どのようにコミュニケーションしようとしたか、その創意工夫のやり方に注目するべきである。
しかし、これは言うは易く行なうは難し、である。発音や文法の正確さならば一目瞭然で評価できるが、「コミュニケーションを取ろうとした努力を評価する」というならば、学習者が何回手を上げたか、会話をリードしようとしているか、などの点を評価していくことになる。
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ウ 語,連語及び慣用表現
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(ア) 1,200語程度の語
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(イ) in front of,a lot of,get up,look forなどの連語
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(ウ) excuse me,I see,I’m sorry,thank you,you’re welcome,for exampleなどの慣用表現
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ここで重要な点は1,200語程度の語数を要求している点である(以前の指導要領では900語であった)。さらに、言語材料の取り扱いについては、以下のように述べている。
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イ 文法については,コミュニケーションを支えるものであることを踏まえ,言語活動と効果的に関連付けて指導すること。
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ウ (3)のエの文法事項の取扱いについては,用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう配慮し,実際に活用できるように指導すること。
私が始めて英語に触れたのは、Jack and Betty の教科書であった。Here is a pen. Here are books. のような文から始まっていた。「実際のコミュニケーションの時には、見ればペンがあるのがわかるので、Here is a pen. というような発話はあり得ない」と批判する人が多い。ただ、これは文法の構造を知っていくためには、文法構造が簡単な文を論理的に並べた方法で、一概に悪いとは言えない面もある。
文法中心で英語を覚えることだが、なんとかそれをコミュニケーションに結びつけようとする方法が現段階での定番な方法になろう。
発音記号だが、40年ほど前は中学校の段階で知ることが必要であった。現在は必ずしも覚えることは必要とはされていない。「3 指導計画の作成と内容の取扱い」において次のように記されている。
また,音声指導の補助として,必要に応じて発音表記を用いて指導することもできること。
発音表記だが、現代はIPAを用いることが多いが、学者によっては、異なる発音表記を使う例もある。このあたり、英語教員が頭の整理整頓をしてから学習者に教えるといいだろう。
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
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小学校における外国語活動との関連に留意して,指導計画を適切に作成するものとする。
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外国語科においては,英語を履修させることを原則とする。
中学校に入ってきた生徒たちがどの程度の英語力を持っているか、知ることは難しい。昔は、新入生の英語に関する知識はゼロという想定で授業を始めることができたが、今では、それは難しい。彼らの中には小学校である程度は慣れている者、塾や英会話教室でも同じく英語に触れている者などがいることを勘案して、生徒たちに、どのレベルから教えていけばいいのか、一番迷うのである。