英語の授業を成立させる根本的なもの
英語の授業は正直言って、学習者が強い動機付けさえ持っていれば、どのような授業であっても、成果を上げる。英語の授業とは、内容よりも、むしろ学習者の動機付けをどのように保持するか。そのことの方が、遙かに大切である。つまり、英語の授業とは、学習者のやる気を引き起こし、その気をできるだけ高めることが一番大切であると言えよう。
動機付けの分類
動機付けについては、統合的動機付けと道具的動機付けの二つが大きな動機付けとして有名である。どちらが語学学習に効果的であるか数多くの検証実験が行われてきた。
授業法
授業法を下にいくつか示すが、それらは動機付けとどのように関連するだろうか。関連性はないとする考えもあろう。しかし、自分は仮説として、統合的動機付けに向く授業法、道具的動機付けに向く授業法、両方に向く授業法があると考える。
(1)文法訳読式
(2)Direct Method
(3)Oral Method
(4)Oral Approach
(5)Total Physical Response
(6)Natural Approach
(7) Communicative Language Teaching (CLT)
これらの授業法は特に音声の訓練の場合は機械的な訓練になりやすい。どのようにして動機付けを持続させるか、あるいは持続させるかが問題である。
小さな子供は機械的な訓練はさほど苦痛ではない。しかし、年齢が上がるにつれて、単なる学習には苦痛を感じて、なぜ?という問いかけを発するようになる。そのときは英文法などの知識にも関心を持つようになる。その関心はどちらの動機に分類されるか。
統合的な動機付け
統合的な動機付けは、その文化を深く理解したい、その社会に入り込みたいというような願いから生じる。(1)~(7)の授業法を見ていくと、統合的な動機付けには向かないだろうと思われる授業法がいくつかある。それはどれになるか。
幼児の動機付け
幼児の時は、母語の習得は熱心である。それは、幼児は自分が生きていくためには、これらの言語を習得しなければならないということを分かっているからであり、生存するためという動機付け、もっとも強い動機付けを感じるのである。
うまく言語を使えなければ、食べ物が得られない、飲み物が得られない、体の不快感を訴えることができない、などを知っているので、母語の習得に必死になるのである。
また、言語を習得するにつれて、自分の意思を相手に使えることができる、逆に相手の意思を知ることができることが快感となって、ますます母語習得に拍車がかかるのである。これは生存的動機付けと言ってよいだろう。あるいは二つの動機付けが一つになっているとも考えられる。
外国語学習
外国語学習には生存的動機付けのような強い動機は働かない。
動機付けを内発的動機と外発的動機に分類することも最近は行われている。その場合は、内発的な動機付けの方が効果的であろう。
道具的な動機付けは動機付けとしては弱いという意見がある。しかし、語学は語学であることを意識しない方がかえって伸びる場合がある。たとえば、最新の医学技術や原子力物理学を知りたいので英語を必死で学ぶとか、漢方薬を研究したいので中国語を学ぶとか、ファッション産業の動向を知りたいのでフランス語を学ぶという勉強法はありである。
これらの学習は、道具的な動機付けに見えるが、内発的な動機付けなのである。