自然習得順序仮説
Krashen は英語を第二言語として学習している人たちは、一定の順序に従って形態素を習得しているという「自然習得順序仮説」(Natural Order Hypothesis)を提唱した。それはDuly & Burt たちの研究による。
Duly & Burt の研究は、拘束形態素 (bound morpheme)として、9つを選択して、それらの要素がどのような順序で習得されるか調査した。対象となったのは、中国語とスペイン語を第一言語とする子供達(5歳から8歳)である。
拘束形態素は、形態論において、語を構成する形態素のうち、単独で語を構成せず他の形態素と複合してはじめて意味を生ずるものを指す。bound morpheme又はbound formの訳であり束縛形態素ともいう。反対に単独で語を構成する形態素を自由形態素(free morpheme/free form)又は非拘束形態素(unbound morpheme)という(Wikipediaより)
習得の順序
その調査に基づいて、Krashen は英語の形態素習得にはある順序が存在すると考えた。
① 進行形(-ing)・複数形(-s)・be動詞
↓
② 進行形を表す助動詞としてのbe動詞・冠詞(a, the など)
↓
③ 不規則動詞の過去形(go→wentなど)
↓
④ 規則動詞の過去形(live→lived)・3人称単数現在のs・所有格の’s(Mary’s)
すると、具体的には以下のような順番で英語の拘束形態素を習得することになる。下線部が習得される部分である。
① He is walking. He has a lot of books. He is a doctor.
② He is walking. He likes the book.
③ He came to my house.
④ He visited my house. He walks to school every day. He is driving his brother‘s car.
日本人の習得
日本人の場合は、習得の順序が異なる部分があると言われている。それは特に、冠詞の部分であり、習得はかなり遅れる。
日本人用に、テキストが編纂される場合は、これらの言語習得の知見をどれくらい取り入れるか、検討される必要がある。
言語習得の普遍性
言語の習得に関しては普遍性があると仮定されている。第一言語習得でも、第二言語習得の場合でも、おそらく第三言語習得の場合でも同じような習得順序と仮定される。(第二言語として習得する場合は、第一言語と共通する部分は、普遍性の順序に関わりなく、習得は早いと考えられる)
また、学習者の第一言語がなんであっても、同じようだと仮定される。
さらに、学習者の年齢に関係なく、幼児であろうが、青年であろうが、中高年であろうが、その順番は同じであると仮定される。
形態素だけでなくて、その他の文法事項(例えば、関係詞、who, which, whose, that, what, of which の習得の順序)、音声の習得の順序も一定であると仮定されている。
言語の普遍性
各言語には普遍的(中心的)な部分と周辺的な部分がある。普遍的な部分は習得が早くて、周辺的な部分はのちになってから習得されると仮定される。