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6.テキスト

6.1 テキストの有用性

授業では、テキストはあった方がよい。小学校の英語教育では当初は手探りの状態で、テキストを使ったり使わなかったりであった。しかし、多くの教員は何をしたらいいのか途方にくれてしまうことがあった。その意味では、テキストの存在はどのように授業を進めるかにとって大いに参考になる。もちろん、テキストはあくまで参考資料として、教員自身が生きた教科書として児童と英語でコミュニケーションしようとすべきである。その場合、テキストの単語だけを中心に教えてしまうことがあるが、文を介在させてコミュニケーションするという原則を守るべきである。いずれにしても、テキストは副次的であり、人間が主体であることを自覚しておくべきである。

6.2 2つのテキスト

過去のテキストとして、『英語ノート』が使われていた。しかし、それが事業仕分けの中で突然、廃止されたのである。『Hi, friends!』はそのままの復活ではないが、基本的には同様な形のテキストである。これは森ゆうこ文科省副大臣の話からもうかがえる(7)。

 この新しい『Hi, friends!』は『英語ノート』とおなじく2冊に分かれている。それぞれが5年生と6年生に割り当てられる。前回の『英語ノート』とほとんど内容は変わっていないとの声もある。ただし、量的にはいくつかの変更が見られるようだ。両者を比較すると、『Hi, friends!』は分量的に24ページも減り(80ページから56ページへと)かなり薄くなった。様々な活動を見ても、Let’s Listenが5年生の部分で2か所、6年生の部分で9か所ほど減っている。同様に、Let’s Singでは2か所と2か所、Let’s Playでは4か所と2か所それぞれ減っている。また、Activityも、19か所と14か所と減っている。一方、Let’s Chantでは、5年生の部分で4か所、6年生の部分では1か所増えている。

総ページ数が減って、子どもたちが取り組むコミュニケーション活動の数が減った。ただし、総時間数は35コマのままであるから、それは、少ない活動に十分に時間をかけて取り組むことが求められていると考えられる。つまり一つ一つは充実してゆっくり行うことが必要になったようだ。

特に、Activityでは、以前の『英語ノート』以上にじっくりと取り組んだり、各自で工夫したコミュニケーション活動等を取り入れたりすることが求められている。これは、『英語ノート』が配布された当時は、「量が多すぎる」「時間内に終わらない」などの意見が多く寄せられたことに対しての反省を反映したとも考えられる。
なお、『Hi, friends!』の目次を以下に示す。

Book1(5年生用のテキスト)
Lesson1 Hello! 世界のいろいろな言葉であいさつしよう(言語・挨拶)
Lesson2 I’m happy. ジェスチャーをつけてあいさつしよう(ジェスチャー、感情・様子)
Lesson3 How many? いろいろなものを数えよう(数,身の回りの物)
Lesson4 I like apples. 好きなものを伝えよう(果物,動物,食べ物、スポーツ)
Lesson5 What do you like? 友だちにインタビューしよう(色、形)
Lesson6 What do you want? アルファベットをさがそう(アルファベット大文字、身の回りの物)
Lesson7 What’s this? クイズ大会をしよう(身の回りの物)
Lesson8 I study Japanese.「夢の時間割」を作ろう(教科,曜日)
Lesson9 What would you like? ランチメニューを作ろう(料理)

Book2(6年生用のテキスト)
Lesson1 Do you have“a”? アルファベットクイズを作ろう(言語・文字)
Lesson2 When is your birthday? 友だちの誕生日を調べよう(行事,月・日付)
Lesson3 I can swim.できることを紹介しよう(スポーツ、動作)
Lesson4 Turn right.道案内をしよう(建物、道案内)
Lesson5 Let’s go to Italy.友だちを旅行にさそおう(世界の国々、世界の生活)
Lesson6 What time do you get up? 一日の生活を紹介しよう(世界の国々、世界の生活)
Lesson7 We are good friends. オリジナルの物語を作ろう(世界の童話、日本の童話)
Lesson8 What do you want to be?「夢宣言」をしよう(職業、将来の夢)

『Hi, friends!』について、これに対していくつかの批判の声がある。英語は素人の担任の多くは、単にテキストを与えられただけでは、どのような授業を行えばいいのか迷うであろう。どのような方向性で行けばいいのか。その方向性を示されるべきである。テキストの持つ基本精神を示しながら、教員研修を同時に行うことでその精神を理解してもらうであろう。

なお、このテキストは「国際理解」という視点からすると物足りないようだ。『Hi, friends!』は、最初の頁だけに世界のあいさつのみがあるだけで、いろいろな国の文化紹介という観点は他にはない。それを補うためには、他の教科の存在があげられる。実は、国際理解教育とは大きな枠組みで考えるべきであり、一つの科目内だけで行うのではなくて、小学校の全ての科目で行うのである、つまり、国語、社会、理科、その他の特別活動の時間でも国際理解教育を積極的に取り入れるべきなのである。

(続く)

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