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中間言語とは

中間言語(interlanguage)とは、Selinker (1972)が提唱した概念である。彼は、人間の脳内には潜在的な言語体系があり、第二言語学習者が目標言語を習得していく過程で、その言語体系を参照しながら、目標言語とも学習者の母語とも異なる独自の言語体系を構築するとの仮説を提唱した。この独自の言語体系が中間言語である。学習者の習得が進展するにつれて、中間言語は変化してゆき、学習者が near-native のレベルに達すると中間言語は消滅することになる。以前はこの中間言語を単なる間違いと考えられていたが、現在では、それなりに言語体系を持った言語であると考えられている。

歴史的には、1950年代~1960年代の構造主義と行動主義の考え方(言語習得とは目標言語の構造を模倣することであるとの考え)、1970年代は学習者が実際におこす誤りを分析する誤用分析(この誤用分析 error analysis では単なる間違いはmistake とされて、発達過程で必然的に繰り返しおこるものをerror として、積極的な意味合いを見つけようとした)を経ている。誤用分析は不十分であると意識されるようになり、学習者の言語体系全体を目標言語とも学習者の母語とも異なる、双方の中間に位置する言語であると考えるようになった。

中間言語と一定の習得順序

英語の形態素は学習者の母語、年齢、学習環境にかかわらずに一定の習得順序があると考えられている。この順序は英語母語話者の習得順序とも一致していたために、言語習得の順序の普遍性を示すものとして注目された。Krashen(1978) はこれを自然な習得順序と考えた。

しかし、その後は、反証も提示されて、現在では、普遍的な習得順序が一律にあるという強い主張はしりぞけられている。

学習指導においても、習得順序に沿って教えるのがよいとされた時期もあったが、現在でさほどその習得順序にこだわらなくなってきている。

中間言語の特徴

中間言語の特徴としては、Over-generalization がある。目標言語の規則を拡大解釈することである。当初は、過去形をwent, came のように個々に覚えていったが、過去形は -ed を付けると理解すると、He goed to school every day. のような文を作ることがある。これらは、その後に正しい形式を覚えるようになる。これらの現象は再構築(restructuring)と呼ばれている。

Simplification もよく見られる特徴である。文法標識を最小限に抑えること、たとえば、活用語尾、屈折形、冠詞などを省略して文を生み出す。例えば、He have two dog. である。

Developmental errorsとは、母語として英語を習得する過程と類似したエラーである。He took her teeths off.  I didn’t weared any hat. なとである。

Induced errors とは、特定の教材、シラバスの配列、教授法などにより誘発されたエラーである。

Errors of avoidance とは、特定の言語項目の使用を困難だと考えてそれを避けて別の表現法を用いることである。仮定法を使うのが不得意な場合は、直説法で同じ意味を表すことである。これは厳密にはエラーではないが、発話はやや不自然な印象を与える。

Errors of overproduction は、特定の言語項目が正確に使用されるものの、その頻度が異常に高い場合である。 

化石化(fossilization)

第二言語習得の途中で、あるレベルで習得がストップするときがある。この現象は、化石化(fossilization)と呼ばれている。これは、学習者の年齢(年齢が高い場合)、学習者の意識(学習者自身が、この程度でいいだろう、これ以上の上達は望まない場合)、コミュニケーションの量(不足の場合)などが影響する。

中間言語の変異性

中間言語には変異性(variability)という特徴がある。例えば、三単現のsであるが、学習者は落としたり、必要ないときに付けたり、あるいは正確に付けたりと変異体を示す。この変異体はランダムに生じるのではなくて、一定の要因に導かれておこる体系的なものである。

例えば、ある発音の正確さは、普通の会話では最も低く、フォーマルな会話、単語リストの読み上げなどの順に正確になっていくことが報告されている。フォーマルな状態になればなるほど、話者の注意が言語形式に向き正確さが増すとも考えられる。このように、中間言語も変化するという点がある。

文献

Krashen, S. (1978)  “Is the ‘natural order’an artifact of the bilingual syntax measure?”  Language Learning, 28,  75-183.

Selinker, L. (1972).  “Interlanguage.”  International Review of Applied Linguistics in Language Teaching, 10, 209-231.

 

 

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