動機付け
動機付けには内発的(内的)動機付けと外発的(外的)動機付けがある。
よい成績を取って友人の賞賛をあびたり両親や教師からほめられたいと考えて勉強するのは、外発的 (外的)動機付け(extrinsic motivation)である。それに対して、そのような賞賛を得るためにではなく、学習そのものが目的である場合は、内発的 (内的)動機付け(intrinsic motivation)である。
内発的動機付けを高めることが生徒の学習効果を上げるのに効果的である。そのためには次のような方法がある。
①英語を勉強することの意義を語って、学習者の興味や関心を高める。
②単なる暗記ではなくて、発見の要素を取り入れて、生徒に「驚き」をいだかせて知的好奇心を刺激する。
③small steps を通して理解するようにして、一歩一歩でも達成感を味あわせ、理解への道を歩いていることを実感させる。
ただ、教室では、内発的な動機付けよりも、外発的動機付けの方法がより効果的な場合がある。次のような方法である。
①報酬や罰を与える。優勝な生徒には賞状を与え、みんなの前で讃える。逆に成績の悪い生徒は叱責する。
②競争意識をかき立てる。成績の一覧表などを提示する。
③英単語を300語、覚えようなどの具体的な目標を与える。
一般的には、学習者が自ら進んで英語を理解したい、学習したいと考える内発的動機付けがより重視されている。これは、外発的動機付けはきわめて不安定であるからである。「奨学金」を目当てに勉 強していた学生が、奨学金制度がなくなると急にやる気を失せる場合などがある。つまり、環境が変わると学習に意欲を 示さなくなる。報酬や罰にばかり関心が向かうならば、カンニングなどの不正の温床となる。もしも、学習そのもの自体へ関心を持つのならば、不正行為などが起こることはなくなる。
ただ、外発的動機 付けをすべて排除することは現実的ではない。まずはどんな動機付けによるものであれ、英語を学ぼうとするならば、それは受け入れるべきである。それが英語学習の第一歩であり、さらなる学習 への動機付け(内発的な動機付け)に結びつくと考えられる。
統合的動機付けと道具的動機付け
外国語学習のときに、大学合格のためのような、ある特定の目的のために学習するのが、道具的動機付け(instrumental motivation)である。それに反して、アメリカという文化にあこがれて、その文化を学びたい、できたらアメリカに住みたいと願って学 習するのが、統合的動機付け(integrative motivation)である。
道具的動機付けの問題点として、大学に合格するために、英語を勉強したとしても、目標の大学に入学してしまうと、英語の勉強を止めてしまう場合がある。それゆえに、動機付けとして非常に不安定である。
ところで、統合的動機付けの方がより効果があるとされてきたが、現在では、置かれた状況によって異なるという結論である。教員としては、この両者を上手に使い分けながら学習者の動機付けを高めることが必要である。
外発的動機付け、内発的動機付け、統合的動機付け、道具的動機付け
これらの動機付けであるが、外発的な動機付けと道具的な道具付けが結びつき、内発的な動機付けと統合的な動機付けが結びつくとも考えられる。完全に重複するのではないが、重なり合う傾向があろう。
統合的動機付けと道具的動機付けは外国語学習だけに有効な概念であるが、内発的動機付けと外発的動機付けは、もっと広い分野でも使える概念なのである。
就職のことも考えよう
学生諸君は就職のシーズンが近ずくにつれて自分に向いている仕事は何か考え始める。企業では、社員の動機付けをどのように高めるか人事部の担当者が日夜頭を悩ましているのである。どうしても、外発的/道具的な動機付けに頼りがちである。給料、昇進などをちらつかせて社員のやる気を出そうとしているのだ。
仕事が面白くて仕方がない、と思っているのは、おそらく経営者か役員たちだけであろう。しかし、できたら、会社の平社員も仕事自体が面白い、という動機を持って働くようになることが大切である。
卒業が近づいて就職先を選ぶときは、就職先での自分の動機付けがどちらになりそうか、よくよく考えた上で選ぶのが望ましい。