漠然とした授業改善からアクション・リサーチへ
アクション・リサーチとは、教員が自ら教室の問題を解決して、授業方法を 改善して、理解することを目的とする。現場における問題意識とその解決を、授業実践を通して発見していく方法である。
教員が漠然と授業に向かっていては、なかなか授業の改善には結びつかない。授業がうまく行かなかったので、単に、今日は昨日とは違った方法で行っただけでは改善の努力が蓄積されない。やみくもに新しい方法を試してみても効果は少ない。科学的に、仮説を立ててそれを検証するという方法を通して、授業を改善していくのが望ましい。その道しるべとなるのがアクション・リサーチである。
アクション・リサーチによって、授業改善をしようとする試行錯誤が、自分の中で、体系的に積み重なって、授業改善に還元されやすくなる。アクション・リサーチの具体的な方法を次に見ていく。
具体的な方法
(1)教室現場における「問題の発見」(problem identification) である。例えば、「なぜ、生徒たちは 積極的にコーラスリーディングをしないのか」など、具体的なテ一 マを設定する。
(2)「事前調査」(preliminary investigation)を行 う。生徒にアンケートを行ったり、自分の授業をビデオに収録して分析をする。また、関連する文献も収集する。
(3)「仮説」 (hypothesis)を設定する。例えば、「教員自身が積極的にモデ ルリ一ディングをせずに,CDを用いていたことが原因」である、というような仮説を立ててみる。
(4)「計画の実行」(plan intervention)となる。具体的 なリサ一チ計画をたてる。仮説を検証すべく「コーラスリーディングの際に、 CDを使わずに教員自身が音読する」という実践を試みる。
(5)「結果」(outcome)を詳しく記録する。どの ような変化が実際に生じたか確認する。ここで、自分の実践や計画の問題点が 明らかになれば、必要に応じてリサーチをやり直す。
(6)「報告」(reporting)する。実践を振り返り、一応の結論をだして報告する。
課題
アクション・リサーチは、従来の数量的な研究中心から、教育現場における質的な研究にも目を向けている。しかし問題も若干ある。
例えば、当該のクラスの問題を確認してその解決法を発見できたとしても、他のクラスに応用できるかが問題である。どれだけ一般化できるのかどうか。教室の中には,教員という要因、学習者に関する要因などさまざまな要因が含まれるため、リサ一チの成果をどのように普遍化するかという問題である。
このような問題は抱えつつも、理論的な裏付けの乏しかったこれまでの「実践研究」とは異なり、リサ一チの普遍化に向けて 大きく踏み出していることは間違いない。授業改善の仮説と検証を通して得られた結果にさらに、数量的な研究などで補うことで、自分の授業実践を高めていくことができる。
PDCA
なお、アクションリサーチはPDCAとも重なる。PDCAとは「Plan(計画)・Do(実行)・Check(検証)・Action(改善)」の頭文字を並べたものである。授業改善に限らず、ビジネスや個人の目標達成に関しても、PDCAの考えは有効である。繰り返し、このPDCAのサイクルを回すことで、常に、問題点を改善しながら、目標達成に進むことができる。
参考となる本
なお、アクション・リサーチの様々な事例、教員がかかえる問題をどのように改善しようとしたかの事例が佐野正之(編)『はじめてのアクション・リサーチ』(大修館書店)に数多く収録されている。