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達成動機について再度説明を行ってみる。様々な動機付けとしてすでに述べてあるが、ここでは詳説する。

マズローの三角形

マズローは、人間の欲求は階層をなしていると唱えている。この説では、人問の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求(所属への欲求)」「認証欲求(尊敬への欲求)」「自己実現への欲求」と階層をなしていて、上位 の欲求が生まれるには、下位の欲求が満たされることが必要であるとの考えである。

マズローの5段階欲求

このことを、英語教育の場で当てはめると、教員は生徒が「自己実現 への欲求」を持ち、自己表現に積極的に取り組んでほしいと望むのだが、それには下層の欲求の充足が前提条件だということになる。英語授業の中で各階層がどのように機能するか考えてみる。教員は下位の欲求にも考慮して授業を進めていく必要がある。

5段階欲求

 最下層の「生理的欲求」は、身体的な快適性を求める欲求である。「空腹だ」「眠い」「疲れた」と感じると勉強意欲は生じない。「空腹感」は授業ではどうすることもできないが、「眠い」「疲れた」という感じは、授業が、リズム感があり面白ければ、これらの欲求は満たされることになる。 一コマの授業時にも、いろいろな活動を入れ、聞かせたり、書かせたり、動作させることで、変化が生まれメリハリがつくと、身体に感じる不快を減らすことができる。

次の「安全欲求」は心理的な快適性への欲求である。教員は生徒に安心感を与えることが大切である。教員が威圧的だったり、教員が生徒の発言の誤りをあまりに数多く指摘すると生徒は萎縮してしまう。逆に、教員が頼りないと、生徒は不安を感じる。要は、この先生について行けば、英語の力が付くのだという信頼感・安心感が必要なのである。

なお、英語をもっぱら使う授業だが、生徒は分からないことを語られると不安を感じる。教員が英語を話すことは必要だが、それが生徒に理解されているか常に確認する必要がある。過度の英語の発声が、生徒に不安を増していないかチェックをする必要がある。また、生徒に言語活動をさせるときには、その目的も説明することで、授業が何を目指すのか分からないという生徒の不安を取り除くことができる。

「社会的要求」は「所属への欲求」とも言われる。教室で仲間意識を抱けるかという問題である。英語の授業が仲間作りに貢献するように工夫する。コミュニケーションを目的とした授業で、ペアワークやグループワークをさせることで、互いに知り合う機会が増えるのである。授業では英語の力を伸ばすと同時に、クラスメートとより深く知り合うことができるように言語活動を設計する。ゲームでも協同的な作業を多くし、連帯感を育成するようにする。自己表現のプレゼンテーションを発表させ、相互に気に入っ た点を言わせたり、相互評価をさせることで連帯感が深まるのである。

しかし、クラスでは必ずしも所属の欲求が満たされるとは限らない。そのクラスでは居心地の悪さを感じている生徒がいる。孤立している生徒もいる。そのような時には、リーダー的な存在で信頼できる生徒に予めお願いしてカバーしてもらうなどの工夫も必要である。

「認証(尊敬)欲求」は仲間や教員に認められたい、認証されたい、という欲求である。生徒には達成可能な目標を与え、成功を評価し、褒める機会を多くするようにする。認証欲求は他人からだけとは限らない、自己肯定の欲求とも結びつく。各人が達成目標を持ち、それを達成することで、自己評価が高まる面もある。

自己実現

自己実現は、5段階の最終段階である。言語学習では、自己の内面を創造的に表出したいという欲求として現れる。自己の未来を描くときに、自分は~をしたい。そのために英語の学習が必要だと感じて、英語の学習=自己実現への道であると感じるようになることが望ましい。

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