教員と教師
英語教育法の教科書は、章立てがだいたい決まっている。「学習者」と来たら次は「英語教員(教師)」の章がくることが多い。それで、「英語教員(教師)」について考えてみたい。
まず、「教員」と「教師」と二つの用語法がある。「教員」ならば、中立的な言い方、労働者としてのteacher というニュアンスがある。「教師」ならば、聖職者としてのteacher というニュアンスがある。それゆえに、「理想の教師」「教師論」という言い方がなじむが、「教員の雇用」「教員の退職金」という言い方が馴染む。このブログでは「教員」という言い方を用いる。
英語教員の課題
英語教員が抱える問題、課題としていろいろなことがある。以下に挙げてみたい。
(1)英語力があること。
(2)英語教授法を心得ていること。
(3)異文化理解があること。
(4)教室を管理する力があること。
(5)生徒指導に巧みなこと。
これらの中で、特に大切なことは、(1)と(2)であろう。文科省は(1)に関して、英検の準一級、TOEFL 550点、TOEIC 730点を挙げている。しかし、「英検準一級程度以上」の成績を収めた教員は高校で6割、中学で3割程度にとどまり、文部科学省の目標を大幅に下回っている。TOEFL, TOEIC では受験したことのない教員も多いだろう。今度はこの数値をうわまわることが文科省からうるさく要求されるだろう。
(2)の英語教授法を心得ていることだが、初めから上手に教えられることは少ない。大切なことは授業改善の意思を常に持っているかどうかという点である。教育委員会主催の授業法研究会に頻繁に顔をだして新しい授業法を取り入れるのも大切である。アクション・リサーチなどを行うことで、日々の授業を実践の中で改善していくこともある。(ただ、ある程度ベテランになると、これでいいや、と授業法の改善に興味を示さなくなる場合がある)
PDCAサイクル
授業をPDCA(計画、実践、評価、改善:Plan- Do- Check- Action)のサイクルで回すと考えることもできる。短期的なサイクルと長期的なサイクルが考えられる。短期的には、生徒からのフィードバックを得て、授業における時間配分を変えたり、難易度を調整したり、言語材料を変えたりする。長期的には、前年の今頃に起こった問題点を前もって記録しておき、この教科書のこの部分が分かりづらかったなどの記録を残しておく。そのような長期的なサイクルも考えられる。
このブログも自分の「英語科教育法」という授業の下調べに書いたものである。この下調べの内容に沿って授業展開をしている。毎年、この「英語科教育法」の授業を受け持っている。今は、5月であるが、昨年の5月の頃の授業の説明や教材をこのブログに記録してある。自分の授業で分かりづらかった点、説明の不十分な点は、ブログを書き直して、次の年は内容が改善されるようにしている。その意味では、このブログ自体が、大きなサイクルのPDCAである。
(3)の異文化に対する理解は、教員の個人的な経験を話したり、外国語という授業の中で必然的に触れる要素がある。これらについての知識を蓄えておく必要がある。
授業を成立させる基本
(4)と(5)は、英語の教員に限らず、教員ならば、必ず面する問題点である。私語が多い。授業に関心を示さない。クラスに孤立した生徒がいて、ペアワークなので、仲間はずれになってしまう。これらは、生徒指導や教室運営の問題であり、ベテランの先生の助言をいただきながら、改善に努める必要がある。マズローの達成動機でもあったが、安全欲求や認証欲求がかなえられていないと生徒はなかなか授業にのめり込めない。その意味では、(4)と(5)は授業の基本中の基本になる。