The Natural Approach とは赤ん坊が言語を覚えるように、第2言語学習者も自然と外国語を覚えるように導いてゆく方法です。
Krashen の仮説
Krashenのいくつかの仮説を紹介しながら、それを応用する教授法について考えていきましょう。
Acquisition – Learning Hypothesis
これは、第二言語が発達される方法は二つあるという仮説でです。一つは文法などを意識的に学ぶ「学習」Learning です。もう一つはコミュニケーションのために言語を無意識に覚える「獲得」Acquisition です。子供たちが母語を獲得していくのは、後者の方法です。私達は日本語を覚えたときは、周りの人達が話す言葉をたくさん聞いて、やがて少しずつ話せるようになったのです。外国語の勉強も同じように、自然と外国語に接する機会をたくさん与えるべきなのです。
教室では、意図的な学習(learning)はしないで、もっぱら自然な言語獲得 (acquisition)が生ずる活動を中心に行うことです。教員は自然な英語を話すことです。スピードもネイティブのような自然なスピードで、ネイティブのような発音で話す必要があります。
The Natural Order Hypothesis
言語の獲得には一定の順番があり、それが逆になることはめったにありません。研究によると、英語を第二言語として獲得していく人は、その人の第一言語が何であるかにかかわらず、また何歳であろうとも、一定の定まった順序で獲得していきます。授業では、あまりに突拍子のない項目や難解な項目は順序立てて、他の項目の獲得が進んでから教えるべきでしょう。
The Monitor Hypothesis
学習者の関心が言語の形式よりも内容そのものに向けられると、言葉を自然の状態で覚えて、言葉の規則・体系は無意識のうちに内在化されてゆきます。これがAcquisition です。そのに反して、文法規則を覚えて、言語を理解しようとする方法は、Learning です。Learning は言語を生み出す力はなくて、発話が文法的に正しいかどうかをチェックする働きをするだけです。
ですので、教員は学習者が自然の状態で、Acquisition (言語獲得)ができるように配慮すべきです。
The Input Hypothesis
学習者の現在の力(これをi)とすると、これより少し程度の高いインプット(i + 1)に触れることで学習者の理解(comprehensive input)がもっとも進むという考えです。インプットのレベルが低すぎれば進歩がなく、逆に高すぎればインプットが理解されずに獲得されません。
教員は学習者のレベルを常に把握しておいて、与える言語材料はそれよりも、やや高めにするように努力すべきです。
The Affective Filter Hypothesis
Acquisition を妨げる心理的障害を「情意フィルター」と呼ぶます。そこでは、学習者が不安を感じないような学習環境を作る必要があります。学習者が、不安な気持ちを有している場合、情意フィルターは高くなり、Acquisitionはスムーズに行われなくなります。学習者が自信を持っていたり、動機が高ければフィルターは低くなるので、Acquisitionは成功しやすくなります。
教員が学習者の発話を直接に訂正すると、学習者の不安な気持ちが高まります。むしろ、教員の正しい英語を多く聞かせることによって、自分の力で訂正するように導くことで、情意フィルターを下げることができるでしょう。また、コミュニケーションのテーマは、学習者が関心を持つ内容ならば、学習への動機が高まります。自分が知っている内容ならば、話す内容への自信が高まります。これらは情意フィルターを下げることになります。
中学生に教えるならば、その年代の子どもたちが知っている歌、映画、ドラマなどを言語材料にするのも一つの方法です。
具体的な授業法
具体的には、まず学習者の推理する能力を最大限活用しながら、Total Physical Response の手法や、Flash Card などを用いて、少なくとも500語の聴解力を付けることです。
次にYes/No answer そして、single word answerと次第に長い応答が可能になるように指導していくことです。そして、最後にゲームや問題解決型のタスクなどを与えて、言語を創造的に使用する力を伸ばすことです。
初期の段階では、文法ではなくて、語彙力を伸ばすこ とを中心にすることです。私たちが母語を獲得したモデルにそって、英語による応答のを通して、言語ル—ルを自然のうちに獲得させようとすることです。また情意フィルターを下げるなどの、情動的な側面も重視すべきことです。
注意
learning の訳は、「学習」でいいかと思います。acquisition の訳は、「獲得」「修得」「習得」などの訳語が当てられます。教科書によってその訳語は異なるようです。