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Community Language Learning の基礎的な考え方

Community Language Learning は Humanistic Approach (人間主義的教授法)の一つであると考えられています。Humanistic Approach (人間主義的教授法)として、Community Language Learningや Suggestopedia  やHumanistic Education(人間主義的教育)などがあります。ここでは、その大枠である Humanistic Approach (人間主義的教授法)から見ていきましょう。

Humanistic Approachの基本的な考え方

 人間学的心理学の研究者であるロジャーズ(C. Rogers)は、価値観が変動する現代を生き抜くためには、固定した知識を与えることよりも、変化に対応できる知識を得る方法を教えることこそが、教 育の目標であると考えました。そして、教員は以下の点に注意すべきと考えました。

  • Teachingではなく、learningに注目するべきです。教員はまず、教え込 むのではなくて、どうしたら学習者の学習が促進されるかを考えるべきです。(学習者中心)
  • そのためには、教員は学習者との人間関係を良好に保つ必要があります。率直で仮面をつけない姿勢で接して相互信頼の関係を樹立するようにします。(教員と学習者の人間関係や情動面の重視)
  • 学習者の主体性を尊重した、人と人が高めあい、成長しあう学習活動を心がけるべきです。(人間的成長が教育目標) 

Community Language Learning (Counseling Learning Method)

ロジャーズの考えに近い外国語教授法として、キュラン(C. Curran)神父が提唱したCommunity Language Learning (CLL)が挙げられます。これは発想がカウンセリングに根ざしている ことからCounseling Learning Methodと呼ばれることもあります。

ここで一番重視されるのは、教員と学習者との教室内の人間関係です。 「外国語学習の際に感じる脅威や不安を、共感的理解や受容によって、同じ共同体に所属しているという連帯感に変えてゆく。それによって、学習者は自己理解に至り、不安や脅威に対抗する方法を得る。教員は学習者の主体性を尊重して、彼等の自信を高めて、仲間意識や協同の精神を高める学習を展開しなければならない」とキュランは主張しています 。

具体的には、学習者は丸く座り、自由に話題を選択して、母語で話しま す。教員(カウンセラ-とも呼ばれる)は座の外側に座る。学習者(クライアント)は話したいことを母語で話す。それを教員が外国語に訳して、その学習者の背後から、そっと英語で教えてます。話された英語だけを録音して、後で録音を再生して意味を確認します。時としては板書して文法的な解説を与えます。学習者が次第に言語能力を獲得してくれば、教員は求められた時にだけ助力することにな ります。

キュランは言語能力の発達段階を、人問の成長になぞらえて5段階に区別 しています。それによれば、教員に全面的に依存する初期の段 階から、自信を持って発話して、自己の表現を改良するためのアドバイスを受け入れる最終段階まであります。それぞれの段階に適した助力が学習者には必耍です。

  • 胎児期 (Birth stage):教員(knower)に全面的に依存していて、教員なしには目標言語が話せない。
  • 自己主張期 (Self stage):少しずつ自信がつき単純な文を自分で使い始めるが、教員にまだ依存している。
  • 別個存在期 (Separate existence):自分たちだけで目標言語のみを使い会話することを望み、教員の干渉や助力を拒否する。
  • 役割転換期 (Adolescence):学習者は自立していますが、教員と自分たちの間の知識の差は十分に認識していて、批判を受けたり訂正されたりすることに反発したりすることはない。
  • 独立期 (Independence):教師から完全に独立して自由にコミュニケーションできる。

なお、最終段階では、教員の助言や修正は自然なコミュニケーションを中断し てしまうので、カードを用いて、カードの色で発話のスタイルや文法的な適切さの度合いを示すという工夫がなされています。

しかしいずれの段階でも、教員と学習者の相互に相手に対する信頼の念や受容的理解が存在しなければ、この教授法は成功しません。相互信頼と、学習者自身にとって意味のある発話と活動、また主体的な学習による認知力の活性化が成功の鍵だと言われています。

問題点

この方法の問題点は、学習者の自主性に任せすぎで、教員からの指示が少ないことです。さらに、学習者が初期の段階では演繹的学習が必要ですが、この方法では、あまりに帰納法的学習に頼っています。この方法の成功の鍵は、教員の翻訳能力に非常に依存している点が挙げられます。

教員は、学習者の母語と目標言語のバイリンガルであること、またはそれに近い能力の持ち主であることが求められます。そして、我慢強く、穏やかな性格で、カウンセリングのトレーニングを受けていることも必要とします。

学習者が目標言語で言いたいことを言うのを聞くので、学習項目が 易→難 と進むとは限りません。発言者が恥ずかしがる場合は、沈黙が続くので、教員は何か工夫をする必要があります。

この方法を日本の英語教育界で使うことは難しいようですが、この方法の持つ精神、つまり、学習者の自主性を重んじること、教員と学習者の連携などの面で、学ぶ点が多いようです。

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