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認知主義教授法(Cognitive Approach)

認知主義教授法(Cognitive Approach)は口頭教授法の批判として提唱されたもので、認知主義心理学と変形文法 理論をもとにしています。次の2つに大別できるようです。一つは、認知主義理論(CCLT ; Cognitive Code Learning Theory)です。もう一つは、発見学習の考えに基づいた方法です。その例は、サイレントウエイ(Silent Way)です。Silent Way についてはすでに説明をしてありますので、ここでは、Cognitive Code Learning Theoryについて紹介していきたいと思います。

認知主義教授法の考え方

認知主義教授法は認知主義心理学と変形文法理論が結合した認知主義理論に基づいています。オーズベル(Ausubel)は、「有意味受容学習」の考え方から、変形文法の理論を直接あるいは間接的に言語学習に用いようとしたのです。その考え方は、次のようになります。

  • ①言語の基本的構造パタンを有意味に練習します。
  • ②構造についての練習の前に変形文法に沿って文法の説明を演繹的に行います。
  • ③母語の使 用は認められます。
  • ④文字と音声を交互にまた、同時に提示して、4技能を最初から教えます。
  • ⑤音声教材は、初学者にはナチュラル・スピードでなく ゆっくりした速度で触れさせます。その後に次第に普通の速度にします。

この考えでは、生徒は理性を働かせる能力を持って授業への積極的な参加者とみなされます。授業での目標はある種の習慣を形成したり、言語行為を示すのでなく、生徒達の中にすでに内在化されている言語能力を伸ばすことです。そのために、教員と教材の役目は自然な 文脈で言語材料を提供することです。そこでは、生徒自身は自然に学習方略と能力を活性化していきます。教員は生徒の学習を成功させる手助けをするが、最終的な責任は生徒自身にあるのです。

問題点

問題点としては、変形文法を用いた十分開発された教材がなくて、さらにそれに基づいた教授法が見当たらないことです。曰本の中学高校で変形文法を取り入れてこの教授法を実施した例はほとんどな いようです。近年は変形文法自体への関心が下がっているので、この方法の適応例はもっと少なくなるでしょう。

結論的に言うと、学習者に対する説明の 1つとして、変形文法を用いることはありえるかもしれません。でも、その範囲を限定しない限り、たくさんの抽象的なル—ルの説明に追われ、実際の言語使用によっ てルールを内在化する時間が不足することになります。

レイコフによれば変形文法は、研究者に言語の本質や文構造への洞察を与えることにあるのであり、学習にはむしろ伝統文法の方が分かりやすい、と指摘しています。変形文法を直接利用するのではなく、そこで示されてい る「competenceからperformanceへ」という洞察に注目すべきでしょう。

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