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先般、「テストと評価」でどのような種類があるか説明をした。今日はその中から到達度テストと熟達度テストを再度述べてみる。なお、ここでの記述は、村野井仁他『総合的英語科教育法』(成美堂)を参考にしている。
到達度テスト
到達度というのは、これまでの授業の内容が習得されたかどうかを示す指標である。つまり、到達度テスト(achievement test)は、指導内容を生徒が習得したのかどうかを確認することが目的である。高校や中学でよく行われる 定期テスト(中間テストや期末テスト)は、指導内容を生徒が習得したかどうかを確認するための到達度テストであ る。したがって、はっきりとした指導内容があることが前提としている。
中学や高校の場では、教科書の何ページから何ページまでが出題範囲であると教員があらかじめ述べておくことが多い。その内容は語窠や文法項目のような比較的範囲が明確な言語要素のこともあれば、「話す」というように学んだことと学ばなかったことの区分けが難しい場合もある。
基準参照テスト (criterion-referenced test)であり、全員が到達度に全然達していなければ全員がゼロ点になったり、全員が十分に達していれば全員が満点になることもある。
熟達度テスト
熟達度(proficiency)というのは言語を使って、ある課題や作業を行うことが出来るかどうかを示す指標である。TOEFL や IELTS のように学習者があるレベルに達しているかどうかを検証するために用いられるテストが多い。そこでは、特定のカリキュラムや教科書を前提としていない。大学に入ってからの学業をこなす実力があるかどうかの測定を目的とするテストならば、そのテストは熟達度テストである。
したがって、ある大学で入学後必要とされる英語技能が読解、語彙力、文法力、翻訳ならば、それらの技能をテストできるように、その大学の入試問題にに含めるべきである。なお、TOEFLは北米の大学で授業を受けるだけの技能があるかどうかを調べることが目的であるから、講義や文献を理解して、授業における討論に参加することが可能かどうかを検証する、つまり学術上の英語運用能力を検証するための熟達度テストである。
規範参照テスト (norm-referenced test)であり、受験者の得点は正規分布曲線を描くことが多い。
過去と未来
到達度テスト(achievement test)はテスト実施までに指導した内容を学習者が習得しているかどうかを検 証するので、視点が過去に向いていると言える。また、熟達度テスト(proficiency test)はテスト実施後に行われる予定のある活動に参加する能力があるかどうかを確認するためのテストであるので視点が将来に向いているといえる。
通常、学校で行われている外国語教育においても、到達度を測定するのか熟達度を測定するのかというのは大きな問題である。いわゆる中間テストや期末テストは、授業でそれまでに指導した内容をテストするので、それ以外の内容から出題するのは避けるべきである。一方の、いわゆる実力テストは、まんべんなく偏りがなくて出題されるべきである。