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リーディングは読み手と書き手の共同作業

リーディングでは、個々の単語や構文にあまりに深く関わっていては「木を見て森を見ず」のようになってしまう恐れがある。たしかに、書き手の意図を発見しようと読み手が謙虚に読んでいくこと自体は問題はない。しかし、ある点にこだわってしまっては、いつまでも全体像がつかめないことになる。かといって、一つ一つの単語を無視しても問題である。要は、適度に全体を見て、また、適度に部分を見るということである。

また、リーディングとは、読み手が受動的に取り組むものではない。むしろ読み手が自分の問題意識を投げかけて、能動的に読み手の意図を読み取る作業である。その意味では、読み手と書き手の共同作業であると言えよう。

トップダウンとボトムアップ

二つの方法

リーディングには2つの方法が考えられる。1つは、ボトムアップ(bottom-up processing)である。1つ1つの単語を正確に理解して、それから文、パラグラフ、テキスト全体へと理解を積みあげてゆく方法である。従来は、ボトムアップ方式の読解方法が奨励されていた。ただ、欠点としては、個々の単語を正確に理解をしているように見えても、全体を通して書き手が何を言おうとしているのか理解できないことが多いのである。

そのような反省から、近年は、読み手の中に内在する先行知識を英文の補足説明や話しの展開を予測をしながら読み解いてゆく方法が優勢になってきた。これは、トップダウン(top-down processing)という。この内在化された先行知識をスキ一マ (schema)と呼ぶ。そして、人はこのスキーマを活用してリーディングを行っているのである。

形式スキーマと内容スキーマ

スキーマには、形式スキーマと内容スキーマがある。前者は綴り、語彙、統語などの形式に関するスキーマである。後者は読み手自身の背景知識や経験などから構築された社会・文化に関するスキーマである。読み手は、この二つのスキーマを活性化しながら読んでゆくのである。おおざっぱに言って、ボトムアップ方式だと形式スキーマを活用することが多くて、トップダウン方式だと内容スキーマを活用することが多い。

自分の情報の更新を常に行う

英文を読んで行く過程で、新たな英文からの情報が次から次と入ってくる。それらを、これまでの理解と照らし合わせて、矛盾が生じないように解釈していく。もしも、どうしてもうまく説明がいかない時は、先行知識から得ていた情報を一新するか、逆に、新たな英文情報に間違いはないか再度検討することになる。

教員の指導のあり方

リーディングとは読み手がスキーマを活用して、積極的に予測や推測をしながら理解を試みるプロセスである。指導する際には、生徒達がスキーマを活用して積極的に次の展開を予想させるように動機づけることが必要である。そのための訓練がリーディングの指導基本にあるべきだ。

なお、トップダウンとボトムアップはバランスよく扱われるべきである。一方だけということはあり得ない。従来は、あまりにボトムアップの方法が重視されすぎたので、その反省からトップダウン方式が見直されているとも言えよう。

リスニングとリーディングの相似

リーディングはリスニングと似た面がある。リーディングもリスニングもメッセージを受け取るという意味からは、受動的な活動であると考えられていた。しかし、双方とも主体的に聴き取ろう、読み取ろうという意欲を持つことで、単なるメッセージの受け取りから、一段レベルアップした活動になる。これは、テキストはそれ自体では意味を持たず、読み手がスキーマを活性化して初めて意味が生じてくると考えられる。

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