○
ライティングに適切な方法をいくつか考えてみたい。中学の3年生や高校生のレベルに相応しいライティングをここでの考察の対象にする。中学生レベルならば、ライティングの指導(1)を参照してほしい。
要約(summarizing)
生徒に英語の文章を要約させるのはライティング指導に有効な方法である。原文の概要を簡潔・的確に再現することが要約のポイントである。生徒にはどれくらいの分量に要約させるか教員が指示した方がいい。10行程度とか、20行程度のような具体的な分量が示されると生徒もまとめやすくなる。
そのためには、キーワードをマークさせたり、トピック・センテンスはどれであるか下線を引かせたりして、確認させることが大切である。スキャンニングやスキミングなどの方法を学生に教えるのも有効である。内容を自分の言葉で言い換えをすることは、なかなか難しいかもしれないが、この方法は是非とも奨励したい。
日記(diary)
生徒が書く習慣を身につけることを目的として、日記を書くことは有効である。教員からは、時間は特に指示しないで、とにかく毎日1行でもいいから続けることと励ますのがいいだろう。毎週1日だけ英語で日記をつけさせて、それを特定の曰に提出させたり、夏休みや 冬休みに日記をつけさせて休み明けに提出させたりするといい。教員は日記に点検済のゴム印を押したり、コメントを書いたりして日記を返却する。フィードバックとして、日記を見て、生徒達の典型的な誤りをいくつかまとめて授業で解説すると効果的である。
日記の書き方には 2通りがある。1つは、時間の順序に従う書き方である。 もう1つはある特定の事柄だけを述べる書き方である。時間の順序に従う書き方は、ことがらが起きた順序に書くものである。生徒の一日に起こったことを書く方法である。初めは、時系列で書いていくのが取っつきやすいだろう。第2の書き方は、印象に残った大きなことがらだけを取り上げて書くものである。これはある程度はライティング力がついた生徒には有効な方法であり、この方法を発展させることで、日記からエッセイ・ライティングへと発展させることができる。
Kaplan の示す各民族の論理構造
英語の論理の展開は、日本語の論理の展開とは異なると言われる。英語風のパラグラフの書き方を意識させるのも有効だろう。文章の展開の仕方も文化によって相違があるが、それを示した図として、Kaplanの有名な論理展開図がある。彼は、各民族の論理の展開を英語系、セミ語族系、東洋系, ロマンス語形、ロシア語形の5つのタイプに分けて、図示した。そして、英語は論理の進め方が直線的に進むと述べている。Kaplan は英語話者であるので、英語の論理展開が一番すっきりとしているとやや我田引水的に述べたのだが、参考になる点もある。このような論理の流れを生徒に意識させるとライティングそのものに関心を示す生徒が出てくる。これは文化の相違、異文化理解へとつながる。

パラグラフ・ライティング
英語は重要度はイメージとして、逆三角形になると言われる。一番上の辺、つまり、パラグラフの先頭の部分が最も大切で、下に行くほど重要でないことがら が出てくるタイプの文章が多い。この型は日本語とは正反対で、 日本語では大半の場合は、最後の部分に結論を持ってくる。
英語のパラグラフの書き方としては、トピック・センテンス(topic sentence)を含む導入部分(introduction)がある。次に討論 (discussion)があって、最後に結論(conclusion)の3つの部分から成って いる。導入部分でパラグラフのまとめを示す文(トピック・センテンス) を挙げて、討論では何故そのように述べるのかの理由や説明を行い、最後に討論の部分を要約する。そこでは、トピック・センテンスとは異なる表現を使って 結論を書くことが多い。
以上のことを、実際の英文を読ませて生徒に解説するのがよい。
ブレイン・ストーミング
作文を書かせる前に、数分間だが、文法や語彙や順序などを気 にすることなく、できる限り早く、これから書くテーマについて思いつくままを生徒に言わせて、教員がそれを黒板に書くことによって、様々な考えを産み 出すことができる。良く好まれるトピックは環境問題や移民問題なのだが、中学生ではそれに関する十分な語彙は持っていないかもしれない。My School, Men and Women, iPhone, Olympic Game などのようなトピックが生徒達がとりつきやすいだろう。
生徒が提示したトピックに対して、who, what, when, where, why, howなどの 問いかけを教員がして、生徒に答えさせて深化させるのもいい。この段階では文法は気にせず、頭に思いつくままに言わせたり書かせたりすることに集中することが大切である。これは、プレライティングの活動として有効である。
マインド・マッピング
この活動では、ある主題を聞かせ、頭に浮かんだ語句をすべて、数分間だが紙に書かせる。 その後、ペアで互いに書いたことを見せ合う。そして、ペアの相手の説明を聞 いて、自分のメモ(マインド・マップ)に新たな情報をつけ加えるのである。これも、ブレイン・ストーミングと同様に、プレライティングの活動として活用すればよい。