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評価とテストに関してはいろいろな用語が多い。ここではそれらの用語をまとめてみよう。なお、望月昭彦(編)『英語科教育法』(大修館書店)を参考にしている。

評価とテスト

評価(assessment)は、授業の中で、教員は意識的にあるいは無意識に学習者の評価をしている。これは、偶発的に行うコメントや励ましのようなinformal assessment と、テストのように形式にのっとって行われるformal assessment がある。テスト(test)は、評価の1つの方法で、学習者の能力、適性、動機などを数量化して把握するために設計され ている。

テストの種類

客観テストと主観テスト

テストにどのような種類があるのかを考えるとき、最も大きな違いはテスト項目の形式が客観的に採点できるかどうかである。例えば、テストの採点をする時に論述式の場合は採点者の主観で点数に差が出てくるので主観テスト (subjective test)と呼ばれる。それに対して、多肢選択式のテストや、 正誤テストは採点者が誰であっても同じ点数が出るので客観テスト(objective test)と呼ばれる。

たとえば、自由作文(free writing)、制限付き作文(controlled writing)、要約(summary writing)、英問英答(questions and answers)などは、記述式のテストであり、採点が主観的になる。一方、正誤テスト(true or false)、多岐選択法(multiple-choice)、組み合わせ(matching)、穴埋め(completion, fill-in)、並べ替え(rearrangement)、誤文訂正(correction)、クローズテスト(cloze test)などは客観テスト(objective test)である。採点者がだれであっても同じ答えが出る。採点は容易だが、準備に時間がかかる。

集団基準準拠テス卜と目標基準準拠テスト

学力テストや大学入試や高校入試などでよく使われる相対評価は、集団基準準拠テスト(norm-referenced test)である。また、現在、小学校・中学校・高校において通知表に使われている観点別評価とは目標基準準拠テスト(criterion-referenced test)である。この名称は、規範参照テスト (norm-referenced test) と基準参照テスト (criterion-referenced test)という言い方がされることもある。

両者の違いは、他の参加者と比べて相対的な位置関係を調べるのか、あるいは、個人の絶対的な能力を調べるのかの点で異なる。集団基準準拠テスト(規範参照テスト)では、得点を100点満点にした場合のテス卜を採点処理した結果、0点から100点までに得点が散らばり、平均点が50点になる正規分布曲線を描くことを基本とする。逆に言えば、中位の生徒が50点を取るようなテスト問題を作成しなければならない。目標基準準拠テスト(基準参照テスト)は到達基準を前もって設定し、その到達基準に 達したか否かを測定するのである。全員が達することもあれば、全員が達しないこともある。

集団基準準拠テスト(規範参照テスト)の利点は全体の集団の中での個々の生徒の相対的位置が分かること、生徒にとっては競争心が動機付けになることがある。能力別クラス分けテストなどは、この種のテストである。一方の目標基準準拠テスト(基準参照テスト)の利点は目標行動の点で基準を明確にできることであり、その明確な目標行動に向けて動機付けができることである。全員が80点以上を取るまで単語テストを繰り返し行うことは、その一例である。

観点別評価

観点別評価は目標基準準拠テストを意味する。2001年に生徒指導要録(生徒の公式的な学習の記録)が改訂され、「観点別学習状況」の評価を基本に、生徒の実現状況を学習指導要領の目標に準拠(目標基準準拠=絶対評価)してA,B, Cの3段階で評価す ることになった。また、必修教科について学習指導要領に示す目標に準拠して、その実現状況を総括的に評価して5段階の数値で「評定」を行うこと、教科や総合的な学習の時間の学習に関する所見及び個人内評価は「総合所見及び 指導上参考となる諸事項」の欄に記載することになった。

「観点別学習状況」は、英語科は次の4つの観点、「コミュニケーションへの関心・意欲・態 度」、「表現の能力」、「理解の能力」、「言語や文化についての知識・理解」、各々について、A,B, Cの3段階でつけることになった。5段階の「評定」も1991年の生徒指導要録と異なり、集団の中の順位づけ(相対評価)ではなくて、目標基準準拠である。

総合的評価と分析的評価

総合的評価(holistic evaluation)は、global rating, impres­sionistic scoring, impression methodとも呼ばれ、受験者の言語表現に対して包括的な評価を与えるために、ただ1つの総合的な尺度を用いる 評価法である。ただ、全体の印象で評価してしまう傾向がある。分析的評価(analytic evaluation)は、受験者の言語表現のさまざまな側面を別々に評価する評価法である。例えば、作文を採点する際に、文章構成、論理展開、文法、 文体などに分けてそれぞれ尺度基準を設定して採点するのである。

熟達度テスト・到達度テスト

熟達度テスト(proficiency test)は、一般的な英語の知識技能を測定 するテストで、TOEFLや英検がこれに含まれる。テスト範囲なしで行わ れる校内実力テスト、学力テストもこれに属する。
到達度テスト(achievement test)は、授業で学習した知識技能をどの程度身につけたかを測定するテス卜で、テスト範囲を決めて行う中間テスト、期末テスト、学年末テストなどの定期テストがこれにあたる。くわしくは、到達度テストと熟達度テストを見ること。

総括的評価・形成的評価・診断的評価

総括的評価(summative evaluation)は、学習の指導が終了した段階 で行われる評価方法で、定期テストがこれにあたる。形成的評価(for­mative evaluation)は、指導過程の途中で継続的に繰り返される評価方 法で、小テストがこれにあたり、教員にとっては授業の改革や改善に、生徒にとっては学習の反省に役立つ。診断的評価(diagnostic evalua­tion) は、英語の知識、技能について、生徒の得意な分野と不得意な分野を調べるためのテストで、その結果に基づいて生徒の弱点補強を行うことができる。教員が授業の内容や方法を変えることが必要となることもある。

直接テストと間接テスト

直接テスト(direct test)は,測定したい技能そのものを実際に参加者 に行わせるテス卜で、テストに使うタスクもテキストも、できる限りオー センテイツクなものでなければならない。例えば、作文の技能を測定した いときに、参加者に実際に作文を書かせるテストを行うのが直接テストで ある。これに対して、測定したい技能を間接的に測定するテストは間接テ スト(indirect test)と呼ばれる。例えば、発音の能力を測定するために、 実際に発音させるのではなく語のどこに第1アクセントがあるかを受験者に答えさせるのは間接テストである。

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