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英語教員とは、「英語を教える」「教員」である。つまり、「英語を教えること」に熟達していて、「教員」としても的確である必要がある。まず「教員」としての資質は何か考えてみよう。それらの素質を備え持った教員がいわゆる「理想の英語教師」である。
教員としての資質
教職としての資質能力として、使命感、責任感、探求力、向学心、教育的愛情、を持っていることである。さらには、専門職として、英語の教員に限らず、教員は生徒指導を行う必要がある。学級運営、生活指導、進路指導、特別活動の指導、教育相談などを適切に行う必要がある。さらには人間として、人間性、社会性、コミュニケーション力、協調性を持っていることが必要である。
英語教員としての資質
文科省は2004年の「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」の中で、英語教員の英語力として、英検の準1級、TOEIC 730, TOEFL PBT 550 以上を必要と述べている。2014年時点では、小学校で0.8%、中学校で28%、高等学校で53%の教員がこの数値に達している。この数値に達する教員の数は増えている。英語教員としての英語力を目指す場合は、これらの数値が一つの目安になる。
他の教科の教員と英語の教員の大きな違いは、他教科の教員が母語である 日本語を使って教科を教えるのに対して、英語の教員は自分の母語ではない英語を教えることである。しかも近年は授業は英語で行うことが基本になっている。母語でない英語を使って、母語で ない英語を教えるのだから、ほとんどの日本人教員は常に不安で自信が持てない状態で授業をすることになる。
しかし、この「曰本人」の英語教員の弱点は、逆に、そのことが日本人の英語教員の強みになるのである。常に英語と 「格闘」しているのであるから、英語学習に困難を感じている生徒の立場になれるのである。つまり、生徒と同じ目線で英語という学習対象を見ることができるのである。教員本人が英語学習で苦労をしたが故に、同じ道を歩む生徒の苦労を理解できて、適切な方向性を示すことができる。
言い換えれば、教員の英語運用能力は高ければ高いほど望ましいというわけではない。むしろ、教員が英語が得意で話しすぎても困るのである。生徒たちに英語を使う機会を与えるにはどのようにしたらいいのか、教員はどのような発話を行うべきなのか、教員と生徒の発話のバランスはどの程度がいいのかなどについて判断ができることである。
英語の面白さを伝える。
教員自らが英 語の難しさと面白さを日々体験することである。それを生徒に適切に伝えることで生徒の学習意欲を引き起こすことができる。自分が外国のある人と英 語を媒介としてコミュニケーションをしているならば、その面白さ、その時の苦労を語ることで、生徒の共感を得ることができる。英語を通して、どのような情報が人手できたのか、その面白さ、英語の便利さを伝えることも大事である。授業そのものが楽しいのは大切だが、さらに重要なのは、それによって、生徒は英語は面白いと感じ、好きになり、自ら学びたいという気にさせることである。
そのためには、自ら英語学習者であり続ける教員でありたい。生徒に対して教員自身も常に勉強していることを示すことである。「先生も一生懸命に勉強しているのだから自分も勉強しよう」という気にさせることがで きればしめたものである。
生徒の実情を知る。
中学、高校の場合は、1年生の指導が大切である。自分の生徒が小学校、 中学校でどのような英語の授業を受けてきたのか、何をどの程度までわかっているのか掴んでいなければ、効果的で楽しい授業はできない。特に中学校の1年生の指導が大切である。小学校でも英語教育が普及しており、教科化と必修化の流れの中で、小中の連携がうたわれているが、実情はまだ進展はしていない。小学校の段階でどこまで学んでいたのかを知ることは大切である。
英語をうまく説明できる。
生徒に英語をうまく説明できることが必要である。文法力や英語分析力が問われる。生徒が分からないことの多くは文法や語法に関することがらである。「理屈抜きで覚えなさい」とか「そうなのだから、そうなのだ」という指導では生徒はついてこない。生徒がつまずく点を普段より把握しておき、それを分かりやすく説明することが大事である。毎日の授業の教材研究に加えて、定評のある辞書、英文法や語法の本などを常に参照しながら、 学習英文法の基本はしっかり身につけておく必要がある。
授業をうまく進める。
授業力をあげるには、英語指導法の研究と実践の積み重ねを続けていくことである。研究・公開授業に参加したり、教授法の本や雑誌を読んだりしての自己研修をすることである。生徒へのアンケートなどで自分の授業を評価してもらったり、自分の授業を信頼できる同僚の先生に見てもらいアドバイスをもらうのもいい方法である。
生徒との位置関係を適切に保つことも必要である。常に黒板の前にいては変化に乏しい授業になる。また、常に机間巡視をしていては、あわただしい授業になる。動き一つでもバランスのよい態度が求められる。適切な声の大きさや、黒板への板書の方法、授業に応じた座席の位置(講義形式、グループで島を作る、ペアで島をつくる)などの実践的な技術にも慣れている必要がある。
電子機器を使いこなす。
近年、IT機器の発達がめざましい。それにより、外国語教育の方法が変化している。現段階でも、パソコン、タブレット、スマホを語学学習に活用するのは当然となっている。また、電子黒板やPowerPointを用いたプレゼントなどが普及している。これらの機器を生徒の程度に合わせて活用できるかどうかは、授業の要になっている。
辞書は冊子型辞書から電子辞書へと移り変わった。音声機能がついていたり、過去の名作が埋め込まれている電子辞書を利用し始めている。教員もこれらの普及に遅れないように、その活用法には常に注目していなければならない。